題名: | 西掖省即事 |
作者: | 岑參 |
西掖重雲開曙暉,北山疎雨點朝衣。千門柳色連青瑣,三殿花香入紫微。平明端笏陪鵷列,薄暮垂鞭信馬歸。官拙自悲頭白盡,不如巖下偃荆扉。 | |
英譯: | 暫無英譯內容 |
日譯: |
幾重にもかさなった雲がさけて、曙のあかりがさしそめた。北方の山なみから風に吹かれて飛んでくるまばらな殘り雨のしずくが、パラパラと官服にふりかかる。禁中の數多くの門にそうた柳の色は線に萠えて青く塗った扉のかさりにつらなってなびい ている。おごそかな三殿の前に吹く花の香は空氣に漂うて中書省にもはいってくる。毎朝早くからうやうやしく正しく笏を捧げて参内する百官の班列に従ってならぶし、日暮れともなれば退廳して鞭をだらりとたらして馬の進むにまかせて自宅へ歸ってく る。官海遊泳衛の拙い自分はいっこう官等も昇進せずに白髪頭の老人になってしまっ たのは悲しいことだ。こんなことなら山中に隠れて苔むした岩の下で、草の庵を結び戶をしめきって枕を高くして卧しているほうがどんなにましかる知れない。
西掖(せいえき)の重雲(ちょううん) 曙暉(しょき)を開(ひら)き、 北山(ほくざん)の疎雨(そう) 朝衣(てうい)に點(てん)ず。 千門(せんもん)の柳色(りうしょく) 青瑣(せいさ)に連(つら)なり、 三殿(さんでん)の花香(くわかう) 紫微(しび)に入(い)る。 平明(へいめい) 笏(こつ)を端(ただ)して鵷列(えんれつ)に陪(ばい)し、 薄暮(はくぼ) 鞭(むち)を垂(た)れて馬(うま)に信(まか)せて歸(かへ)る。 宦拙(くわんつたな)く自(みづか)ら悲(かな)しむ 頭(かうべ)の白盡(はくじん)するを。 知(し)かず 巖下(がんか) 荊扉(けいひ)に偃(ふ)せんには。 西掖の重雲 曙暉を開き、 北山の疎雨 朝衣に點ず。 千門の柳色 青瑣に連なり、 三殿の花香 紫微に入る。 平明 笏を端して鵷列に陪し、 薄暮 鞭を垂れて馬に信せて歸る。 宦拙く自ら悲しむ 頭の白盡するを。 知かず 巖下 荊扉に偃せんには。 |