題名: | 夏日南亭懷辛大 |
作者: | 孟浩然 |
山光忽西落,池月漸東上。散髮乘夕涼,開軒臥閑敞。荷風送香氣,竹露滴清響。欲取鳴琴彈,恨無知音賞。感此懷故人,中宵勞夢想。 | |
英譯: |
THE Sun sets upon the hills,
And over the pond the moon is rising
I let loose my hair To feel the evening coolness;
I open the windows and recline, Content and at leisure.
he winds bring me the scent of the lotus blossoms;
From the fall of the dewdrops off the bamboos comes a quiet music.
I would take down my Iyre and play,
But no one cares tor such diversions;
Thus I am left to think of my friend,
And midnight dreams of him return unending.
The sun has set behind the western slope, The eastern moon lies mirrored in the pool; With streaming hair my balcony I ope, And stretch my limbs out to enjoy the cool. Loaded with lotus-scent the breeze sweeps by, Clear dripping drops from tall bamboos I hear, I gaze upon my idle lute and sigh: Alas no sympathetio soul is near! Dear friends of other days in dream-clad forms arise. And so I doze, the while before mine eyes |
日譯: |
山光(さんこう) 忽(たちま)ち西(にし)に落(お)ち、池月(ちげつ) 漸(ようやく)東(ひがし)に上(のぼ)る
髮(かみ)を散(きん)じて 夕涼(せきりょう)に乗(じょう)じ、軒(けん)を開(ひら)きて 閑廠(かんしょう)に臥(ふ)す
荷風(かふう) 香気(こうき)を送(おく)り、竹露(ちくろ) 清響(せいきょう)を滴(したた)らす
鳴琴(めいきん)を取(と)りて 弾(だん)ぜんと欲(ほっ)するも、知音(ちいん)の賞(しょう)する無(な)き恨(うら)む
此(こ)れに感(かん)じて故人(こじん)を懷(おも)い、終宵(しゅうしょう) 夢想(むそう)を労(ろう)す
山光 忽ち西に落ち、池月 漸東に上る 髮を散じて 夕涼に乗じ、軒を開きて 閑廠に臥す 荷風 香気を送り、竹露 清響を滴らす 鳴琴を取りて 弾ぜんと欲するも、知音の賞する無き恨む 此れに感じて故人を懷い、終宵 夢想を労す 山の端に映ずる夕日の光は、みるみるうちに西の彼方に消えてゆき、池の面に映じる月は、しだいに東の空に上ってくる。髪の毛をばらばらにしてくつろぎながら、夕方の涼風に吹かれるままにし、窓を開いて、ここ南亭の静かなあずまやに臥している。すると、そのとき、はすの花を吹く風は、その花のかおりをふき送り、竹のしずくは、きよらかなひびきを立てて、したたり落ちている。 琴を手に取り、弾き鳴らそうと思うのだが、かの伯牙における鍾子期のような楽の音を聞いて、弾く者の心を理解する知己で、味わってくれる人のいないのが恨めしい。このことを思うにつけて、古くからの友人辛大をなつかしんで、一晩中、夢にまで思いわずらうのだ。 山(やま)の端(はし)に映(う)ずる夕日(ゆうひ)の光(ひかり)は、みるみるうちに西(のし)の彼方(かなた)に消(き)えてゆき、池(いけ)の面(めん)に映(えい)じる月(つき)は、しだいに東(ひがし)の空(そら)に上(のぼ)ってくる。髪(かみ)の毛(け)をばらばらにしてくつろぎながら、夕方(ゆうがた)の涼風(りょうふう)に吹(ふ)かれるままにし、窓(まど)を開(ひら)いて、ここ南亭(なんてい)の静(しず)かなあずまやに臥(ふ)している。すると、そのとき、はすの花(はな)を吹(ふ)く風(かぜ)は、その花(はな)のかおりをふき送(おく)り、竹(たけ)のしずくは、きよらかなひびきを立(た)てて、したたり落(お)ちている。 琴(こと)を手(て)に取(と)り、弾(ひ)き鳴(な)らそうと思(お)うのだが、かの伯牙()における鍾子期(しょうしき)のような楽(がく)の音(おと)を聞(き)いて、弾(ひ)く者(もの)の心(こころ)を理解(りかい)する知己(ちき)で、味(あじ)わってくれる人のいないのが恨めしい。このことを思(おも)うにつけて、古(ふる)くからの友人(ゆうじん)辛大(しんだい)をなつかしんで、一晩中(ひとばんじゅう)、夢(ゆめ)にまで思(おも)いわずらうのだ。 山(やま)の夕映(ゆうば)え見(み)る間(あいだ)に消(き)えて 池上(いけがみ)の月(つき)ようやくのぼり 髪(かみ)を解(と)いて夕(ゆう)べの涼風(すずかぜ)にふかれ まどを開(あ)いて暢(の)びやかに南亭(みなみてい)に臥(ふ)す 蓮(れん)の葉(は)わたる風(かぜ)はよき香(かお)りを送(おく)り 竹(たけ)を滴(したた)る露(つゆ)は清(きよ)き響(きょう)を伝(つた)う 琴(こと)とりて弾(ひ)かむと思(おも)えども 知音(ちいん)のものの無(な)きを恨(うら)む さればこそ友(とも)を憶(おも)いて 夜半(やはん)しきりに君(きみ)を夢(ゆめ)みる 山の夕映え見る間に消えて 池上の月ようやくのぼり 髪を解いて夕べの涼風にふかれ まどを開いて暢びやかに南亭に臥す 蓮の葉わたる風はよき香りを送り 竹を滴る露は清き響を伝う 琴とりて弾かむと思えども 知音のものの無きを恨む さればこそ友を憶いて 夜半しきりに君を夢みる 山光(やまみつ) 忽(たちま)ち西(にし)に落(お)ち 池月(ちげつ) 漸(ようや)く東(ひがし)に上(のぼ)る 髪(かみ)を散(さん)じて夕涼(せきりゃう)に乗じ 軒(まど)を開(あ)いて閑敞(かんしゃう)に臥(ふ)す 荷風(かふう) 香氣(こうき)を送(おく)り 竹露(ちくろ) 淸響(せいきゃう)を滴(したた)らす 鳴琴(めいきん)を取(と)りて彈(はづ)ぜむと欲(ほっ)するも 知音(ちいん)の賞(しょう)するなきを恨(うら)む 此(こ)れに感じて故人を懷(おも)い 中宵(ちゅうしょう) 夢想(むそう)を勞(ろう)す 山光 忽ち西に落ち 池月 漸く東に上る 髪を散じて夕涼に乗じ 軒を開いて閑敞に臥す 荷風 香氣を送り 竹露 淸響を滴らす 鳴琴を取りて彈ぜむと欲するも 知音の賞するなきを恨む 此れに感じて故人を懷い 中宵 夢想を勞す 山の端の太陽はたちまち西に沈み、 池の向こう、月がいつしか東に昇る。 ざんばら髪で夕ベの涼しさを我がものとし、 窓を開けてひろびろした部屋に寝そべる。 はすの花に吹く風は芳しい香りをはこび、 竹の葉末の露は清々しい音をひびかせて滴る。 手元の琴をとりあげ弾こうと思ったが、 残念ながら愛でてくれる理解者がいない。 それで思い起こしたのは旧友の辛大くん、 夜もすがらしきりとかれの夢をみる。 山光(さんこう) 忽(たちま)ち西(にし)に落(お)ち 池月(ちげつ) 漸(ようや)く東(ひがし)に上(のぼ)る 髪(かみ)を散(さん)じて夕涼(せきりょう)に乗(じょう)じ 軒(けん)を開(ひら)いて閑敞(かんしょう)に臥(ふ)す 荷風(かふう) 香気(こうき)を送(おく)り 竹露(ちくろ) 清響(せいきょう) 滴(したた)る 鳴琴(めいきん)を取(と)りて弾(ひ)かんと欲(ほっ)するも 知音(ちいん)の賞(しょう)ずる無(な)きを恨(うら)む 此(こ)れに感(かん)じて故ん(こじん)を懷(おも)い 終宵(しゅうしょう) 夢想(むそう)を労(ろう)す 山光 忽ち西に落ち 池月 漸く東に上る 髪を散じて夕涼に乗じ 軒を開いて閑敞に臥す 荷風 香気を送り 竹露 清響 滴る 鳴琴を取りて弾かんと欲するも 知音の賞ずる無きを恨む 此れに感じて故んを懷い 終宵 夢想を労す |