題名: | 送魏萬之京 |
作者: | 李頎 |
朝聞遊子唱離歌,昨夜微霜初渡河。鴻鴈不堪愁裏聽,雲山況是客中過。關城樹色催寒近,御苑砧聲向晚多。莫見長安行樂處,空令歲月易蹉跎。 | |
英譯: |
The traveller who only last night crossed the light frost laden shore
Is heard to sing a parting song at morn.
Unbearable will seem the wild goose cry, the mountains veiled in cloud,
To one who journeys forth alone, $homesickness in his heart: $
The turning leaves of frontier trees will urge the winter near,
And louder still at dusk will sound the palace washing blocks.
00 Linger not in Chang-an's pleasure quarters:
There, months and years are turned to empty waste.
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日譯: |
朝(あさ)、旅人(たびびと)である君(きみ)が、別離(べつり)の歌(うた)をうたっているのを聞(き)いた。昨夜(さくや)は薄(うす)い霜(しも)が、初(はじ)めて黄河(こうが)を南(みなみ)にわたって来(き)た。南(みなみ)へ渡(わた)って飛(と)ぶがんの鳴(な)き声(こえ)は、旅(たび)の愁(うれ)いの中(なか)に身(み)を置(お)く人(ひと)がじっと耳(みみ)を傾(かたむ)けて聞(き)くには、耐(た)えられないもので、まして、雲(くも)のかかる高(たか)い山々(やまやま)を、旅(たび)の途中(とちゅう)に通(とお)り過(す)ぎる身(み)にはなおさらのことだ。
君(きみ)が行(い)く関所(かんしょ)の町(まち)の夜明(よあ)けの色(いろ)は、寒(さむ)さをかき立(た)てて身近(みちか)に迫(せま)り、長安(ちょうあん)の宮中(きゅうちゅう)の庭園(ていえん)あたりからは、きぬたのひびきが、夕暮(ゆうぐ)れには盛(さか)んに聞(き)こえよう。長安(ちょうあん)の町(まち)は、歓楽(かんらく)の地(ち)である。君(きみえ)よ、そこで時間(じかん)を空費(くうひ)してしまうことなどないようにと祈(いの)る。
朝、旅人である君が、別離の歌をうたっているのを聞いた。昨夜は薄い霜が、初めて黄河を南にわたって来た。南へ渡って飛ぶがんの鳴き声は、旅の愁いの中に身を置く人がじっと耳を傾けて聞くには、耐えられないもので、まして、雲のかかる高い山々を、旅の途中に通り過ぎる身にはなおさらのことだ。 君が行く関所の町の夜明けの色は、寒さをかき立てて身近に迫り、長安の宮中の庭園あたりからは、きぬたのひびきが、夕暮れには盛んに聞こえよう。長安の町は、歓楽の地である。君よ、そこで時間を空費してしまうことなどないようにと祈る。 朝(あした)に聞(き)く 游子(ゆうし)離歌(りか)を唱(うた)ふる 昨夜(さくや) 微霜(びそう)初(はじ)めて河(か)を度(わた)る 鴻雁(こうがん) 愁裏(しゅうり)にきくに堪(たえ)ず 雲山(うんざん) 況(いわ)んや是(こ)れ客中(かくちゅう)に過(す)ぐるをや 関城(かんじょう)の曙色(しょしょく)寒(かん)を催(うなが)して近(ちか)く 御苑(ぎょえん)の砧声(ちんせい) 晚(くれ)に多(おお)からん 是(こ)れ 長安行楽(ちょうあんこうらく)の処(ところ) 空(むな)しく歲月(さいげつ)をして蹉跎(さた)たり易(やす)からしむこと莫(な)かれ 朝に聞く 游子離歌を唱ふる 昨夜 微霜初めてを度る 鴻雁 愁裏にきくに堪ず 雲山 況んや是れ客中に過ぐるをや 関城の曙色寒を催して近く 御苑の砧声 晚に多からん 是れ 長安行楽の処 空しく歲月をして蹉跎たり易からしむこと莫かれ 離別の歌を唱うを聞く 昨夜は初霜が 早くも黄河を渡ってきた かりがねの鳴く声は 旅愁の中に聞くに堪えず 雲かかる山々を 君はこれから越えてゆく 関城のあたり 明けゆく空に寒気せまり 御苑の砧は 日暮れにひとしお響くだろう さあれ長安は遊楽の地 君よ空しく光陰を誤つなかれ 朝(あした)に聞(き)く 游子(ゆうし)離歌(りか)を唱(うた)うるを 昨夜(さくや) 微霜(びそう)初めて河(か)を度(わた)る 鴻雁(こうがん) 愁裏(しゅうり)に聴(き)くに堪(た)えず 雲山(うんざん) 況(いわ)んや是(こ)れ客中(かくちゅう)に過ぐるをや 関城(かんじょう)の曙色(しょしょく) 寒を催(もよお)して近(ちか)く 御苑(ぎょえん)の砧声(ちんせい) 晚(くれ)に向かって多(おお)し 長安は行楽(こうらく)の処(ところ) 空(むな)しく歲月をして蹉跎(さた)たり易(やす)からしむる莫(なか)れ 朝に聞く 游子離歌を唱うるを 昨夜 微霜初めて河を度る 鴻雁 愁裏に聴くに堪えず 雲山 況んや是れ客中に過ぐるをや 関城の曙色 寒を催して近く 御苑の砧声 晚に向かって多し 長安は行楽の処 空しく歲月をして蹉跎たり易からしむる莫れ 朝、旅人がわかれの歌をうたうのを聞いた。ゆうべ霜が黄河をこえて、うっすらと、この地に降りたのが目についた。愁いをいだく身にとっては北からわたってくる雁の聲も聴くにも堪えないだろうし、まして雲のたちこめた山々のあたりを旅をして過ぎていくのだからその心ぼそさはひとしおだろう。關所のあるこの町の木々の葉も色づいて寒さがせまってくるのを思わせ、近々と見えている。いまごろ都の御苑のあたりでは、冬着の準備の砧うつ音が夕暮れになるにつれて、あちらこちらからひんばんに聞こえてくることだろう。長安の都には歡樂の巷がたくさんある。君はそんなところに足をとられて、うかうかと月日をむだにすごし、とりかえしのつかぬようなことをしないでくださいよ。 朝(あした)に聞(き)く 遊子(いうし)の離歌(りか)を唱(うた)ふを。 昨夜(さくや) 微霜(びさう) 初(はじ)めて河(か)を度(わた)る。 鴻雁(こうがん)は愁裏(しうり)に聴(き)くに堪(た)へず、 雲山(うんざん) 況(いは)んや是(こ)れ客中(かくちゅう)に過(す)ぐるをや。 關城(くわんじゃう)の樹色(じゅしょく) 寒(かん)を催(もよほ)して近(ちか)く、 御苑(ぎょえん)の砧聲(ちんせい) 晚(ばん)に向(むか)って多(おほ)し。 見(み)ること莫(なか)れ、長安(ちゃうあん)行樂(かうらく)の處(ところ)。 空(むな)しく歲月(さいげつ)をして蹉跎(さた)し易(やす)からしむ。 朝に聞く 遊子の離歌を唱ふを。 昨夜 微霜 初めて河を度る。 鴻雁は愁裏に聴くに堪へず、 雲山 況んや是れ客中に過ぐるをや。 關城の樹色 寒を催して近く、 御苑の砧聲 晚に向って多し。 見ること莫れ、長安行樂の處。 空しく歲月をして蹉跎し易からしむ。 |