題名: | 酬郭給事 |
作者: | 王維 |
洞門高閣靄餘輝,桃李陰陰柳絮飛。禁裏疎鐘官舍晚,省中啼鳥吏人稀。晨搖玉佩趨金殿,夕奉天書拜瑣闈。強欲從君無那老,將因臥病解朝衣。 | |
英譯: |
Gilded with sun-set, the towers of your mansion
are aflame.
Blossoms of peach and plum brighten the purple shade;
willow catkins sail in the air.
From within the forbidden halls, the distant bell rings
out the end of day for office workers.
A few executives linger on...
Birds begin their good-night lullaby;
At daybreak, you hasten to the golden palace, your jade
decorations bouncing;
At evening, with a deep court bow, you receive the edict
from the Emperor...
Once I wanted to follow your course, but now, afflicted
with years
And resigned to fate, I put away official robes—and rest.
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日譯: |
幾重(いくじゅう)にも重(かさ)なり向(む)かい合(あ)った門(もん)や高(た)い楼閣(ろうかく)は、夕日(ゆうひ)の余光(よこう)にぽんやりとかすんで見(み)えており、桃(とう)や李(り)の木(き)が茂(しげ)っていて暗(くら)いあたりには、白(しろ)い柳絮(りゅうじょ)が晩春(ばんしゅん)の空(そら)に乱(みだ)れ飛(と)んでいる。宮中(きゅうちゅう)の間遠(まどお)な鐘(かね)の音(おと)は、宿直(とのい)する役所(やくしょ)の夕暮(ゆうぐ)れに響(ひび)いており、宮中(きゅうちゅう)に鳴(な)く鳥(とり)の声(こえ)の聞(き)こえるころ、役人(やくにん)たちの姿(すがた)もほとんど見(み)られなくなる。
早朝(そうちょう)あなたは腰(こし)につけた玉飾(たまかざ)りを揺(ゆ)り動(うご)かしながら、天子(てんし)の宮殿(きゅうでん)に出仕(しゅっし)し、夕方(ゆうがた)、天子(てんし)の下(くだ)されるみことのりを捧(ささ)げ持(も)って青瑣門(せいさもん)とよばれる高門(こうもん)に向(む)かって拝礼(はいれい)される。わたしもなんとかしてあなたの後(あと)に従(したが)おうと思(おも)うのだが、迫(せま)り来(く)る老年(ろうねん)をどうすることもできない。病(やまい)に臥(ふ)しているこの機会(きかい)に官職(かんしょく)を辞(やめ)したいと思(おも)う。
幾重にも重なり向かい合った門や高い楼閣は、夕日の余光にぽんやりとかすんで見えており、桃や李の木が茂っていて暗いあたりには、白い柳絮が晩春の空に乱れ飛んでいる。宮中の間遠な鐘の音は、宿直する役所の夕暮れに響いており、宮中に鳴く鳥の声の聞こえるころ、役人たちの姿もほとんど見られなくなる。 早朝あなたは腰につけた玉飾りを揺り動かしながら、天子の宮殿に出仕し、夕方、天子の下されるみことのりを捧げ持って青瑣門とよばれる高門に向かって拝礼される。わたしもなんとかしてあなたの後に従おうと思うのだが、迫り来る老年をどうすることもできない。病に臥しているこの機会に官職を辞したいと思う。 洞門高闊(どうもんこうかく) 余暉(よき)に靄(あい)たり 桃李陰陰(とうりいんいん)として 柳絮(りゅうじょ)飛(と)ぶ 禁裏(きんり)の疎鐘(そしょう) 官舎(かんしゃ)の晚(くれ) 省中(しょうちゅう)の啼鳥(ていちょう) 吏人(りじん)稀(まれ)なり 晨(あした)に玉佩(ぎょはい)を揺(よう)して 金殿(きんでん)に趨(おもむ)き 夕(ゆう)べに天書(てんしょ)を奉 (ほう)じて 瑣闈(さい)を拝(はい)す 強(し)いて君(きみ)に従(したが)わんと欲(ほっ)するも 老(おい)を那(いかん)ともする無(な)し 将(まさに)臥病(がびょう)に因(よ)りて朝衣(ちょうい)を解(と)かんとす 洞門高闊 余暉に靄たり 桃李陰陰として 柳絮飛ぶ 禁裏の疎鐘 官舎の晚 省中の啼鳥 吏人稀なり 晨に玉佩を揺して 金殿に趨き 夕べに天書を奉じて 瑣闈を拝す 強いて君に従わんと欲するも 老を那ともする無し 将臥病に因りて朝衣を解かんとす 奥深い御門 高い楼閣は夕日にかすみ 桃李は小暗く茂り 柳 は飛ぶ 夕の鐘はゆるやかに禁中に響き 官舎のあたりが暮れてくると 宮中はただ鳥の声して つかさびとの影も稀 朝に玉佩をならして御殿にいそぎ タは詔書を捧げて宮門に拝する 君にならってつとめて私も 職事に励もうとしてきたが もはや老いた私はどうにもならぬ 病に臥する身は早く 参内の衣を脱いで 自由な身になりたいと思う 洞門高闊(どうもんこうかく) 余暉(よき)に靄(あい)たり 桃李陰陰(とうりいんいん)として 柳絮(りゅうじょ)飛ぶ 禁裏(きんり)の疎鐘(そしょう) 官舎の晚(くれ) 省中(しょうちゅう)の啼鳥(ていちょう) 吏人(りじん)稀(まれ)なり 晨(あした)に玉佩(ぎょくはい)を揺(うご)して金殿(きんでん)に趨(はし)り 夕(ゆうべ)に天書を奉 (ほう)じて瑣闈(さい)を拝(はい)す 強(し)いて君に従(したが)わんと欲(ほっ)するも老(ろう)を那(いか)んともする無(な)し 将(まさ)に臥病(がびょう)に因(よ)りて朝衣(ちょうい)を解(と)かんとす 洞門高闊 余暉に靄たり 桃李陰陰として 柳絮飛ぶ 禁裏の疎鐘 官舎の晚 省中の啼鳥吏人稀なり 晨に玉佩を揺して金殿に趨り 夕に天書を奉 じて瑣闈を拝す 強いて君に従わんと欲するも老を那んともする無し 将に臥病に因りて朝衣を解かんとす 奥深い門や、そそりたつ高閣に、夕日の名残が映えてかすんで見える。桃も李も若葉に響いてくる鐘の聲に官舎は晚れてゆく。門下省ではねぐらにつく鳥の鳴く音がひとしきり聞こえたが、役人たちの姿も、もうまばらになった。 しかし給事中の職は期は早くから腰の佩をゆるがせながら宮中におもむき、夕方は詔敕をささげもって青瑣門を禮拜して霸り出られる。君がこの榮職を奉して精勵恪勤につとめていられるのは敬服にたえない。自分もなんとか努力して、君のあとについてゆきたいと思うのだが、こう年をとってはどうにもならない。病氣を理由に、辭職を願い出ようとしているところだ。 洞門(どうもん)高閣(かくかく) 餘暉(よき)靄(あい)たり。 桃李(たうり)陰陰(いんいん)として柳絮(りうじょ)飛(と)ぶ。 禁裏(きんり)の疎鐘(そしょう) 官舍(くわんしゃ)の晚(くれ)。 省中(しゃうちゅう)の啼鳥(ていてう) 吏人(りじん)稀(まれ)なり。 晨(あした)に玉佩(ぎょくはい)を搖(ゆる)がして金殿(きんでん)に趨(おもむ)き、 ダ(ゆうべ)に天書(てんしょ)を奉(ほう)じて瑣闈(さい)を拝(はい)す。 强(し)ひて君(きみ)に従(したが)はんと欲(ほっ)するも老(おい)を那(いかん)ともする無(な)し。 將(まさ)に臥病(ぐわびゃう)に因(よ)りて朝衣(てうい)を解(と)かんとす。 洞門高閣 餘暉靄たり。 桃李陰陰として柳絮飛ぶ。 禁裏の疎鐘 官舍の晚。 省中の啼鳥 吏人稀なり。 晨に玉佩を搖がして金殿に趨き、 ダに天書を奉じて瑣闈を拝す。 强ひて君に従はんと欲するも老を那ともする無し。 將に臥病に因りて朝衣を解かんとす。 |