唐詩平行語料庫研究計畫


題名: 琵琶引
作者: 白居易
潯陽江頭夜送客, 楓葉荻花秋索索。 主人下馬客在船, 舉酒欲飲無管弦。 醉不成歡慘將別, 別時茫茫江浸月。 忽聞水上琵琶聲, 主人忘歸客不發。 尋聲暗問彈者誰, 琵琶聲停欲語遲。 移船相近邀相見, 添酒迴燈重開宴。 千呼萬喚始出來, 猶抱琵琶半遮面。 轉軸撥弦三兩聲, 未成曲調先有情。 弦弦掩抑聲聲思, 似訴平生不得意。 低眉信手續續彈, 說盡心中無限事。 輕攏慢撚抹復挑, 初爲霓裳後六幺。 大弦嘈嘈如急雨, 小弦切切如私語。 嘈嘈切切錯雜彈, 大珠小珠落玉盤。 間關鶯語花底滑, 幽咽泉流水下灘。 水泉冷澀弦疑絕, 疑絕不通聲暫歇。 別有幽愁暗恨生, 此時無聲勝有聲。 銀缾乍破水漿迸, 鐵騎突出刀槍鳴。 曲終收撥當心畫, 四弦一聲如裂帛。 東舟西舫悄無言, 唯見江心秋月白。 沈吟放撥插弦中, 整頓衣裳起斂容。 自言本是京城女, 家在蝦蟇陵下住。 十三學得琵琶成, 名蜀教坊第一部。 曲罷曾教善才伏, 妝成每被秋娘妬。 五陵年少爭纏頭, 一曲紅綃不知數。 鈿頭雲箆擊節碎, 血色羅帬飜酒汙。 今年歡笑復明年, 秋月春風等閑度。 弟走從軍阿姨死, 暮去朝來顏色故。 門前冷落鞍馬稀, 老大嫁作商人婦。 商人重利輕別離, 前月浮梁買茶去。 去來江口守空船, 繞船月明江水寒。 夜深忽夢少年事, 夢啼妝淚紅闌干。 我聞琵琶已歎息, 又聞此語重唧唧。 同是天涯淪落人, 相逢何必曾相識。 我從去年辭帝京, 謫居臥病潯陽城。 潯陽小處無音樂, 終歲不聞絲竹聲。 住近湓江地低濕, 黃蘆苦竹繞宅生。 其間旦暮聞何物, 杜鵑啼血猨哀鳴。 春江花朝秋月夜, 往往取酒還獨傾。 豈無山歌與村笛, 嘔啞嘲哳難爲聽。 今夜聞君琵琶語, 如聽仙樂耳暫明。 莫辭更坐彈一曲, 爲君飜作琵琶行。 感我此言良久立, 却坐促弦弦轉急。 淒淒不似向前聲, 滿座重聞皆掩泣。 座中泣下誰最多, 江州司馬青衫濕。
英譯: One night at Hsün-yang at the head of the Yangtze River I sped the parting guest, The maple leaves and flowering rushes rustled in the autumn, (breeze) The host remounted his horse, the guest entered the boat; Raising our wine cups we were about to drink but we missed the strains of music. Drunk we were not completely happy, for the farewell weighed on our minds. When the moment of parting came, far far the river stretched swallowing the moon: Suddenly we heard on the water the sound of a guitar The host forgot to dismount, the guest did not set out; Seeking the voice we asked in hushed tones who the player might be? The guitar's strains ceased and we were discreetly answered: We moved our boat nearer and requested the player to join us, The wine is replenished, the lamp was relit and the feast re-opened; After a thousand requests and ten thousand entreaties she con-sented to appear. Still clasping her guitar so as to half hide her face Grasping the shaft she struck two or three notes, Before she has completed the prelude she betrayed her emotion. The strings were struck and muted and their notes produced her thoughts As if she was telling how her whole life was unhappy. She lowered her eyebrows, she let her hands stray over the chords as she played, She spoke with a full heart not hiding her feelings. Lightly she plucked the strings and slowly she tuned (and twisted the pegs) She caressed and picked out $((the notes))$. Then she began with the "Song of the Rainbow Skirt and the Feathered Jacket"; Afterwards with the "Six young girls." The bass strings crashed like torrential rains, The trebles murmured like secret whispers Now loud now soft together As big pearls and little pearls are dropped into a jade bowl, Or as the liquid call of the oriole gliding beneath flowering $((trees))$. (We heard) the dark pent up stream flow down to the rapids And now like a spring gripped by frost The strings were brought to a standstill and abruptly the notes died away; In the sadness and melancholy of another my secret grief made itself known, And at that moment silence was more poignant eve than music; (As she continued) the silver bowl was suddenly broke, the water gushed away, Armoured riders rushed out, knives and spears clashed together; The tune finished she put aside (her lute) but she struck once just at the last Four strings sounded together like ripping silk. The east boat and west boat were silent without a word, Only visible was the heart of the river white in the autumn moon. Murmuring to herself she tucked the plectrum into the middle of the strings, Arranging and adjusting her dress she resumed a modest pose. In her own words she tells us she was originally a city girl Her home was at the foot of the Hsia-ma Ling. At the age of thirteen she mastered the P'i-p'a completely. Her name in the teaching school ranked among the first class; Her apprenticeship over she became one of the experts, Dressed in her best she aroused jealousy of even Ch’iu Niang. The smart young dogs of Wu-ling vied with each other to fee her For one tune one did not know how much red silk. Inlaid pins and silver combs were broken and shattered in fragments, Skirts of blood-red silk were stained with wine. This year happy and laughing and again next, The spring breeze the autumn moon has passed without heeding. Her younger brother went off to the wars, Her mother died Evenings came and went as her beauty faded. Her front door became cold and neglected, The horse-chaises were few. When she has withered she marries a merchant― A merchant who thinks only of his profits and lightly of leaving her. Last month he went off to Fou Liang to buy tea When he had gone she came to the mouth of the river in her empty boat, Above her boat the bright moon, $((below))$ the winter waters of the river. In the dark night suddenly she dreams of her youthful years, In her dream she weeps and the rouge on her face comes off with her tears and stains the railings red. When I heard the P'i-p'a already I was reduced to sobs and sighs when I heard her story I was sadder still: Together we shared the same sorrow for we were cold and neglected people, Though we met for the first time what did it matter we had not met before? Last year I quitted the Imperial capital Banished I lay sick at Hsün-yang. Hsün-yang is very secluded; there is no music For a whole year I had not heard either string or bamboo instruments. I live by the river near P'ên Pu city, the ground is low and damp, Yellow reeds and bitter bamboos surround my house; What do I hear between dusk and dawn But the cries of the nightjars and the howls of the gibbon? In spring when flowers bloom of a morning by the river or on a moonlight night in autumn I raise my cup constantly and drain it all alone. And although there are mountain songs and village flutes, Yet they are horrid and unharmonious, grating and tuneless and hard to listen to: This night I had heard the notes of a professional It was like listening to fairy music and my ears for a while were open. Don't refuse, (I said) sit down again and play one more tune While I put your story on paper as the song of the lute. Moved by my words she who had been standing sat down and grasping her lute tight broke into a rapid song In melancholy strains not like her former music. $(The notes touched the whole audience)$ And all of us hearing her again, with difficulty kept back our tears. Among those who sat there, who had to suppress most? The Sub-prefect of Chiang Chou whose dark blue dress was wet.
日譯: 潯陽の江のほとりで夜に旅人を見送った。 楓の葉は紅くオギの花は白く秋の気はさびしげだった。 主人のわたしは馬から下り客である旅人は船中にいる。 別れの杯をあげて飲もうとしたが音楽がない。 酔ってもこれではおもしろくなく気も沈んだまま今にも別れようとした。 このときはてしらぬ大川には月影がうかんでいた。 ふと水上から琵琶の音がきこえた。 主人は帰るのを忘れ旅人も出発を中止した。 声をたよりに暗やみに「弾くものは誰か」とたずねると 琵琶の音はやんでなかなかいおうとしない。 船を動かしてその船の近くへゆきその女を呼びいれ 酒をまた追加し、灯の向きをかえ、もいちど宴会をはじめた。 この女ときたらなん度も呼んでやっと出て来たのだが やはり琵琶を抱いて顔を半分かくしている。 軸を巻いて総をしめ、ばちで絃をはらって二声三声と調子をあわせると まだ曲にはなってないが、もう気持ちが出ている。 演奏がはじまると四つの絃をおさえていろいろな音を出し まるでふだん気持ちのかよわないのを訴えるようだ。 彼女はかおをふせて手にまかせてつづけざまに弾奏し 心の中のかぎりしれぬ思いをすべて説きつくした。 軽く紋をおさえ、ゆるくひねり、音を消したりかき立てたり はじめの曲は霓裳の曲、つぎは緑腰の曲。 ふとい絃はさわがしく夕立のようで、 細い舷はちいさい音を立ててささやきのようだった。 太い音と細い音といりまじって弾奏されると ちょうど大つぶ小つぶの真珠が硬玉の皿のうえに落ちるよう。 いいこえのウグイスがなめらかに花のなかで鳴き また泉がむせびなくように早瀬をくだるかとも思われる。 泉の水が冷たかったりせかれるときのように、絃もこおったかきれたかと しばらく音のまったくたえるときがある。 すると別に幽愁と暗恨とが生じて こんなときは音のしないほうがするよりもまさっている。 たちまち鳴り出すと銀の瓶がわれて水漿がふき出るかのよう またはよろいかぶとの騎馬武者がとび出して刀や鎗の音がするかのようだ。 一曲おわって撥をひき胸にあてて一の字をかくと 四本の絃が同時にきぬを裂くような音をたてる。 東にいた船も西にいた船もひっそりとして声たてず 大川のまんなかに秋の月が見えるだけだ。 彼女はもの思いに沈んで撥を織のあいだにはさみ 衣裳をかいつくろっていずまいを正した。 身の上話をしていうには「わたしはもと長安のうまれで 家は蝦蟇陵のあたりにごさいました。 十三のとき琵琶のけいこをしおえ 教坊の第一部に登録されました。 曲をかなでおわってお師匠さまを感服させたこともありますし お化粧したあとはいつも杜秋娘さんにねたまれました。 五陵の若さまがたは競争で花代をくださるので 一曲の演奏ごとにもらった紅い絹はかずしれぬほどでした。 螺鈿した銀のこうがいなど拍子をとるのにたたいて砕きましたし まっかな薄絹のスカートは酒をひっくりかえしてしみがつく。 今年はおもしろおかしくすごしまた来年もと 秋のお月さまや春風はうかうかとすごしました。 弟は軍隊にはいりますし叔母は死にました。 日をすごすうちに自分の顔もふけました。 かどロはさびしくなり馬で来る人もまれになり 年よって嫁いりして商人の妻になりました。 商人といえば金もうけが大切で別れてくらすのなぞなんでもなく 先月からは浮梁へ茶を買いにいっております。 わたしは大川をゆききしてひとり船の番をしています。 その船のまわりは明るいお月さまと寒い川の水。 夜ふけには若い時のことをふと夢にみて 夢のなかで泣くので化粧もくずれて血の涙がいっぱいです」 わたしは琵琶をきいたときにすでに歎息したが この話をきくと二倍に悲しくなった。 おまえもわたしも同じく世界のはてにおちぶれた人間で こうして逢ってみるとまえからのしりあいでなくっても同じこと。 わたしは去年、長安の都にわかれてから 潯陽のまちにながされて来て病気をしている。 この潯陽は片いなかで音楽とてもなく 一年じゅう絃楽や管楽をきくことがない。 すまいは溢江の近くで土地は低くしめっぽく 黄色いあしと苦竹とが家のまわりにはえている。 そこで朝夕になにを聞くかといえば 血を吐くホトトギスのこえとかなしい猿のなきごえだ。 春の川べの花の朝や秋の明月の夜には 時には酒をとりよせてひとりで飲むことがある。 杣の歌や村びとの笛がないではないが 舌たらずやかん高くて耳をかたむけるわけにはゆかない。 今夜はきみの琵琶の音をきいて 仙人の音楽をきいたようで耳がひとときすんだ。 ことわらないでおくれよ、坐りなおしてもう一曲弾いておくれ。 そうすれば君の音楽を琵琶の歌というのに作りなおすよ。 わたしのこのことばに感激してながいあいだ立ちどまっていたが 坐りなおして紋をかき鳴らすとこんどは急な曲だった。 すずしく澄んだ調子の曲でまえのとはちがっていたので 一座のものはみなこれを聞くと涙が流れてそれを手でかくす。 なかで一番おおく涙を流したのは誰だったろう。 江州の司馬であるわたしがそれで青い官服がぬれてしまった。
潯陽江頭 夜 客を送る 楓葉 荻花 秋瑟瑟 主人は馬より下り客は船にあり 酒を挙げて飲まんと欲するに管絃なし 酔うて歡をなさず惨としてまさに別れんとす 別るる時 茫茫として江は月を浸す たちまち聞く水上 琵琶の声 主人は帰るを忘れ客は発せず。 聲を尋ねて暗に問ふ「弾ずる者は誰ぞ」と 琵琶 聲 停みて語らんと欲すること遅し。 船を移してあひ近づき邀えてあひ見 酒を添え燈を囘し重ねて宴を開く。 千呼万喚してはじめて出で来り なほ琵琶を抱いてなかば面を遮す。 軸を轉じ絃を撥ひ三兩声 いまだ曲調を成さざるにまづ情あり 絃絃 掩抑して聲聲思ひあり 平生 志を得ざるを訴ふるに似たり。 眉を低れ手に信せて續續として弾じ 説き盡す心中無限の事。 軽く攏へ慢く撚りて抹してまた挑ぐ 初は霓裳をなし後は六玄。 嘈嘈 切切 錯雑して弾じ 大珠 小珠 玉盤に落つ 閒關たる鶯語 花底に滑らかに 幽咽する泉流 冰下に難めり。 水泉は冷渋 絃 凝絶し 凝絶して通ぜず聲しばらく歇む。 別に幽愁と暗恨の生ずるあり この時 聲なきは聲あるに勝る。 銀缾たちまち破れて水漿迸り 鐵騎突出して刀鎗鳴る。 曲終り撥を収め心に當てて畫し 四絃一声 裂帛のごとし 東船 西紡 俏として言なく ただ見る江心に秋月の白きを。 沈吟し撥を收めて絃中に插み 衣裳を整頓して起ちて容を斂む。 みづから言ふ「本はこれ京城の女 家は蝦蟇陵下にあって住す。 十三にして琵琶を学び得て成り 名は教坊の第一部に属す。 曲罷みてはかつて善才をして服せしめ 妝成りてはつねに秋娘に妬まる。 五陵の年少争ひて纏頭し 一曲ごとに紅娋 数を知らず 鈿頭の銀篦 節を擊つ砕け 血色の羅裙 酒を翻して汚す。 今年の歓笑 また明年 秋月 春風 等聞に度る 弟は走りて軍に従ひ阿姨は死し 暮去り朝来りて顔色故る。 門前冷落して鞍馬稀に 老大 嫁して商人の婦となる 商人は利を重んじて別離を軽んじて 前月 浮梁に茶を買ひに去る。 江ロに去來して空船を守れば 船を繞る明月 江水寒し 夜深くしてたちまち夢む少年の事 夢に啼けば粧涙 紅闌干たり」と。 われ琵琶を聞きてすでに歎息し またこの語を聞きて重ねて唧唧たり。 同じく是れ天涯論落の人 相逢ふなんぞ必ずしもかつて相識らん。 われ去年 帝京を辞せしより 謫居して病に臥す潯陽城。 潯陽は地僻にして音楽なく 終歳 絲竹の聲を聞かず。 住して湓江に近く地は低湿 黄蘆と苦竹と宅を繞りて生ず。 その閒 旦暮に何物をか聞く 杜鵑 血に啼き猿哀鳴す 春江の花朝 秋月の夜 往往 酒を取りてまたひとり傾く。 あに山歌と村笛となからんや 嘔啞 嘲哳 聴をなしがたし 今夜 君が琵琶の語を聞き 仙楽を聴くがごとく耳しばらく明かなり。 辞するなかれ更に坐して一曲を弾ずるを 君がために翻して琵琶行を作らん。 わがこの言に感じてやや久しくして立ち 却坐して絃を促して絃うたた急なり 凄凄として向前の聲に似ず 満座かさねて聞きみな泣を掩ふ。 なかんづく泣下る誰か最も多き 江州の司馬 青衫湿へり。
潯陽江頭(じんやうこうとう) 夜(よる) 客(かく)を送(おく)る 楓葉(ふうえふ) 荻花(てきか) 秋瑟瑟(あきしつしつ) 主人(しゅじん)は馬(うま)より下(くだ)り客(かく)は船(ふね)にあり 酒(さけ)を挙(あ)げて飲(の)まんと欲(ほっ)するに管絃(かんげん)なし 酔(え)うて歡(くわん)をなさず惨(さん)としてまさに別(わか)れんとす 別(わか)るる時(とき) 茫茫(ばうばう)として江(かう)は月(つき)を浸(ひた)す たちまち聞(き)く水上(すいじゃう) 琵琶(びは)の声(こえ) 主人(しゅじん)は帰(かへ)るを忘(わす)れ客(かく)は発(はっ)せず。 聲(こえ)を尋(たづ)ねて暗(あん)に問(と)ふ「弾(だん)ずる者(もの)は誰(た)ぞ」と 琵琶(びわ) 聲(こえ) 停(や)みて語(かた)らんと欲(ほっ)すること遅(おそ)し。 船(ふね)を移(うつ)してあひ近(ちか)づき邀(むか)えてあひ見(み) 酒(さけ)を添(そ)え燈(ともしび)を囘(めぐら)し重(かさ)ねて宴(えん)を開(ひら)く。 千呼万喚(せんこばんくわん)してはじめて出(い)で来(きた)り なほ琵琶(びは)を抱(いだ)いてなかば面(めん)を遮(かく)す。 軸(ぢく)を轉(てん)じ絃(げん)を撥(はら)ひ三兩声(さんりょうせい) いまだ曲調(きょくてう)を成(な)さざるにまづ情(じゃう)あり 絃絃(げんげん) 掩抑(えんよく)して聲聲(せいせい)思(おも)ひあり 平生(へいぜい) 志(こころざし)を得(え)ざるを訴(うった)ふるに似(に)たり。 眉(まゆ)を低(た)れ手(て)に信(まか)せて續續(ぞくぞく)として弾(だん)じ 説(と)き盡(つく)す心中(しんちゅう)無限(むげん)の事(こと)。 軽(かろ)く攏(をさ)へ慢(ゆる)く撚(ひね)りて抹(まつ)してまた挑(かか)ぐ 初(はじめ)は霓裳(げいしゃう)をなし後(のち)は六玄(りくえう)。 嘈嘈(さうさう) 切切(せつせつ) 錯雑(さくざつ)して弾(だん)じ 大珠(だいしゅ) 小珠(せうしゅ) 玉盤(ぎょくぱん)に落(お)つ 閒關(かんくわん)たる鶯語(おうご) 花底(くわてい)に滑(なめ)らかに 幽咽(ゆうえつ)する泉流(せんりう) 冰下(ひょうか)に難(なや)めり。 水泉(すいせん)は冷渋(れいじふ) 絃(げん) 凝絶(ぎょうぜつ)し 凝絶(ぎょうぜつ)して通(つう)ぜず聲(こえ)しばらく歇(や)む。 別(べつ)に幽愁(いうしう)と暗恨(あんこん)の生(しゃう)ずるあり この時(とき) 聲(こえ)なきは聲あるに勝(まさ)る。 銀缾(ぎんべい)たちまち破(やぶ)れて水漿(すいしゃう)迸(ほとばし)り 鐵騎(てつき)突出(とっしゅつ)して刀鎗(たうきう)鳴(な)る。 曲(きょく)終(をは)り撥(ばち)を収(をさ)め心(むね)に當(あ)てて畫(くわく)し 四絃(しげん)一声(いっせい) 裂帛(れつぱく)のごとし 東船(とうせん) 西紡(せいはう) 俏(せう)として言(ことば)なく ただ見(み)る江心(かうしん)に秋月(しうげつ)の白(しろ)きを。 沈吟(ちんぎん)し撥(ばら)を收(おさ)めて絃中(げんちゅう)に插(さしはさ)み 衣裳(いしゃう)を整頓(せいとん)して起(お)ちて容(かたち)を斂(をさ)む。 みづから言(い)ふ「本(もと)はこれ京城(けいじゃう)の女(をんな) 家(いへ)は蝦蟇(かま)陵下(りょうか)にあって住(ぢう)す。 十三(じふさん)にして琵琶(びは)を学(まな)び得(え)て成(な)り 名(な)は教坊(けうぼう)の第一部(だいいちぶ)に属(ぞく)す。 曲(きょく)罷(や)みてはかつて善才(ぜんさい)をして服(ふく)せしめ 妝(よそほひ)成(な)りてはつねに秋娘(しうぢゃう)に妬(ねた)まる。 五陵(ごりょう)の年少(ねんせう)争(あらそ)ひて纏頭(てんとう)し 一曲(いっきょく)ごとに紅娋(こうせう) 数(かず)を知(し)らず 鈿頭(でんとう)の銀篦(ぎんぺい) 節(せつ)を擊(う)つ砕(くだ)け 血色(けつしょく)の羅裙(らくん) 酒(さけ)を翻(ひるがへ)して汚(けが)す。 今年(こんねん)の歓笑(くわんせう) また明年(みゃうねん) 秋月(しうげつ) 春風(しゅんぷう) 等聞(とうかん)に度(わた)る 弟(おとうと)は走(はし)りて軍(ぐん)に従(したが)ひ阿姨(あい)は死(し)し 暮(くれ)去(さ)り朝(あした)来(きた)りて顔色(がんしょく)故(ふ)る。 門前(もんぜん)冷落(れいらく)して鞍馬(あんば)稀(まれ)に 老大(らうだい) 嫁(か)して商人(しゃうにん)の婦(つま)となる 商人(しゃうにん)は利(り)を重(おも)んじて別離(べつり)を軽(かろ)んじて 前月(ぜんげつ) 浮梁(ふりゃう)に茶(ちゃ)を買(か)ひに去(さ)る。 江ロ(かうこう)に去來(きょらい)して空船(くうせん)を守(まも)れば 船(ふね)を繞(めぐ)る明月(めいげつ) 江水(かうすい)寒(さむ)し 夜(よる)深(ふか)くしてたちまち夢(ゆめ)む少年(せうねん)の事(こと) 夢(ゆめ)に啼(な)けば粧涙(しゃうるい) 紅闌干(こうらんかん)たり」と。 われ琵琶(びは)を聞(き)きてすでに歎息(たんそく)し またこの語(ご)を聞(き)きて重(かさ)ねて唧唧(そくそく)たり。 同(おな)じく是れ天涯論落(てんがいりんらく)の人(ひと) 相逢(あひあ)ふなんぞ必(かなら)ずしもかつて相識(あいし)らん。 われ去年(きょねん) 帝京(ていけい)を辞(じ)せしより 謫居(たくきょ)して病(やまひ)に臥(ふ)す潯陽城(じんやうじゃう)。 潯陽(じんやう)は地僻(ちへき)にして音楽(おんがく)なく 終歳(しゅうさい) 絲竹(しちく)の聲(こえ)を聞(き)かず。 住(ぢう)して湓江(ぼんかう)に近(ちか)く地(ち)は低湿(ていしつ) 黄蘆(くわうろ)と苦竹(くちく)と宅(たく)を繞(めぐ)りて生(しゃう)ず。 その閒(かん) 旦暮(たんぼ)に何物(なにもの)をか聞(き)く 杜鵑(とけん) 血(ち)に啼(な)き猿(さる)哀鳴(あいめい)す 春江(しゅんかう)の花朝(くわてう) 秋月(しうげつ)の夜(よる) 往往(わうわう) 酒(さけ)を取(と)りてまたひとり傾(かたむ)く。 あに山歌(さんか)と村笛(そんてき)となからんや 嘔啞(おうあ) 嘲哳(ちょうたつ) 聴(ちゃう)をなしがたし 今夜(こんや) 君(きみ)が琵琶(びは)の語(ご)を聞(き)き 仙楽(せんがく)を聴(き)くがごとく耳(みみ)しばらく明(あきら)かなり。 辞(じ)するなかれ更(さら)に坐(ざ)して一曲(いっきょく)を弾(だん)ずるを 君(きみ)がために翻(はん)して琵琶行(びはかう)を作(つく)らん。 わがこの言(げん)に感(かん)じてやや久(ひさ)しくして立ち 却坐(きゃくざ)して絃(げん)を促(うなが)して絃(げん)うたた急(きふ)なり 凄凄(せいせい)として向前(かうぜん)の聲(こえ)に似(に)ず 満座(まんざ)かさねて聞(き)きみな泣(なみだ)を掩(おほ)ふ。 なかんづく泣(なみだ)下(くだ)る誰(たれ)か最(もっと)も多(おほ)き 江州(かうしう)の司馬(しば) 青衫(せいさん)湿(うるほ)へり。

國立高雄科技大學應用英語系、高瞻科技不分系/國立彰化師範大學英語系