題名: | 香爐峰下新卜山居草堂初成偶題東壁 |
作者: | 白居易 |
五架三間新草堂,石堦桂柱竹編牆。南簷納日冬天暖,北戶迎風夏月涼。灑砌飛泉纔有點,拂窗斜竹不成行。來春更葺東廂屋,紙閣蘆簾著孟光。長松樹下小谿頭,班鹿胎巾白布裘。藥圃茶園為產業,野麋林鶴是交遊。雲生澗戶衣裳潤,嵐隱山廚火燭幽。最愛一泉新引得,清泠屈曲遶階流。日高睡足猶慵起,小閣重衾不怕寒。遺愛寺鐘欹枕聽,香爐峰雪撥簾看。匡廬便是逃名地,司馬仍為送老官。心泰身寧是歸處,故鄉可獨在長安。 | |
英譯: | 暫無英譯內容 |
日譯: |
五架三室の新しいカヤぶきの家
石の階段、カッラの柱に竹のあみ垣。
南ののきは日がはいるので冬もあたたかく
北の戸口は風がはいるので夏もすずしい。
階段の下の石だたみには飛泉が水滴をとばし
窓ぎわの斜竹はわさと乱雑に植えてある。
来年の春は東のひさしの間を増築し
紙の降子によしずをかけて孟光どのを入れようよ。
たけ高い松の木の下で小さい山川のほとりに
わたしは斑鹿胎の頭巾をつけ白い葛布の冬着を着ている。
薬草畑と茶畑とがわが財産で
野生のシカと林中のツルがわが友だ。
雲が谷間から起ってきて衣裳をしめらし
嵐がこの山中のわが家の台所にはいってくるので、あかりも暗い。
わたしのいちばんうれしいのは、泉を一つ引けてそれが
清くすずしくわが家の階段下の石だたみをめぐって流れていることだ。
朝日は高くのぼり睡眠も十分なのに起きるのがめんどうだ。
このへやではふとんを何枚もかけていて寒くもない。
遺愛寺の鐘の音は枕の上のあたまをちょっともたげてきくし
香爐峰の雪もすだれをはねて見るだけだ。
ここ廬山こそは俗世間の評判からのがれる土地だし
司馬の職ももともと隠居に適した役だ。
心が安泰で身体が安全ならそこが安住の地で
故郷は長安にあるとはかぎってない。
五架(ごか) 三間(さんげん)の新草堂(しんさうだう) 石堦(せきかい) 桂柱(けいちゅう) 竹編(ちくへん)の牆(しゃう)。 南簷(なんえん) 日(ひ)を納(い)れて冬天(とうてん)も暖(あたた)がに 北戶(ほくこ) 風(かぜ)を迎(むか)へて夏月(かげつ)も涼(すず)し。 砌(ぜい)に灑(そそ)ぐ飛泉(ひせん)わづかに點(てん)あり 窗(まど)を拂(はら)ふ斜竹(しゃしく) 行(かう)を成(な)さず。 來春(らいしゅん)さらに東廂(とうしゃう)の屋(おく)を葺(ふ)き 紙閣(しかく) 蘆簾(ろれん)に孟光(まうくわう)を著(つ)けん。 長松樹下(ちゃうしょうじゅか)小谿(せうけい)の頭(ほとり) 斑鹿胎(はんろくたい)の巾(きん) 白布(はくふ)の裘(きう)。 藥圃(やくほ) 茶園(さえん) 產業(さんげふ)となし 野麋(やび) 林鶴(りんかく) これ交遊(かういう)。 雲(くも)は澗戶(かんこ)に生(しゃう)じて衣裳(いしゃう)潤(うるほ)ひ 嵐(あらし)は山厨(さんちゅう)を隠(かく)して火燭(くわしょく )幽(かすか)なり。 もっとも愛(あい)す一泉(いっせん)あらたに引(ふ)き得(え)て 清冷(せいれい) 屈曲(くっきょく) 階(かい)を遶(めぐ)りて流(なが)るるを。 日高(ひたか)く睡(ねむ)り足(た)りなほ起(お)くるに慵(ものう)し 小閣(せうかく) 衾(きん)を重(かさ)ねて寒(かん)を怕(おそ)れず 遺愛寺(いあいじ)の鐘(かね)は枕(まくら)を欹(そばだ)てて聴(き)き 香炉峰(こうろほう)の雪(ゆき)は簾(すだれ)を撥(かか)げて看(み)る 匡廬(きゃうろ)はすなわちこれ名(な)を逃(のが)るるの地(ち) 司馬(しば)はすなわち老(らう)を送(おく)るの官(くわん)たり。 心泰(こころゆたか)に身寧(みやす)ければこれ帰處(きしょ)なり 故郷(こきゃう)なんぞひとり長安(ちゃうあん)にのみ在(あ)らんや。 五架 三間の新草堂 石堦 桂柱 竹編の牆。 南簷 日を納れて冬天も暖がに 北戶 風を迎へて夏月も涼し。 砌に灑ぐ飛泉わづかに點あり 窗を拂ふ斜竹 行を成さず。 來春さらに東廂の屋を葺き 紙閣 蘆簾に孟光を著けん。 長松樹下小谿の頭 斑鹿胎の巾 白布の裘。 藥圃 茶園 產業となし 野麋 林鶴 これ交遊。 雲は澗戶に生じて衣裳潤ひ 嵐は山厨を隠して火燭幽なり。 もっとも愛す一泉あらたに引き得て 清冷 屈曲 階を遶りて流るるを。 日高く睡り足りなほ起くるに慵し 小閣 衾を重ねて寒を怕れず 遺愛寺の鐘は枕を欹てて聴き 香炉峰の雪は簾を撥げて看る 匡廬はすなわちこれ名を逃るるの地 司馬はすなわち老を送るの官たり。 心泰に身寧ければこれ帰處なり 故郷なんぞひとり長安にのみ在らんや。 |