題名: | 在獄詠蟬 |
作者: | 駱賓王 |
西陸蟬聲唱,南冠客思深。 那堪玄鬢影,來對白頭吟。 露重飛難進,風多響易沉。 無人信高潔,誰爲表予心? | |
英譯: |
The autumnal $burden$ of the cicada's song
Troubles this exile, in his southern cap
How reconcile these folds of lustrous black
With the song an old man sings?
Your progress through the heavy dew is slow;
Your voice the loud wind drowns:
When none believe in high integrity,
Who else could sing my soul?
While the year sinks westward, I hear a cicada Bid me to be resolute here in my cell, Yet it needed the song of those black wings To break a white-haired prisoner's heart.... His flight is heavy through the fog, His pure voice drowns in the windy world. Who knows if he be singing still?— Who listens any more to me? While the year sinks westward, I hear a cicada Bid me to be resolute here in my cell, Yet it needed the song of those black wings To break a white-haired prisoner's heart.... His flight is heavy through the fog, His pure voice drowns in the windy world. Who knows if he be singing still?— Who listens any more to me? The year is sinking west, cicadas sing, Their songs stir up the prisoner's grief. I cannot bear the sight of their dark wing, Their hymn to innocence gives me no relief. Wings heavy with dew, hard becomes the flight, Drowned in strong wind, their voice cannot be heard. None would believe their songs are pure and bright, Who could express my feeling deep in word? |
日譯: |
西陸(せいりく) 蟬声(ぜんせい)唱(とな)へ、南冠(なんかん) 客思深(かくしふか)し
堪(た)へず 玄鬢(げんびん)の影(かげ)の、来(きた)りて白頭(はくとう)に対(たい)して吟(ぎん)ずるに
露(つゆ)重(おも)くして 飛(と)べども進(すす)み難(がた)く、風(かぜ)多(おお)くして 響(ひび)き沈(しづ)み易(やす)し
人(ひと)の高潔(こうけつ)を信(しん)ずる無(な)く、誰(た)が為(ため)にかわ予(わ)が心(こころ)を表(あらわ)さん
西陸 蟬声唱へ、南冠 客思深し 堪へず 玄鬢の影の、来りて白頭に対して吟ずるに 露重くして 飛べども進み難く、風多くして 響き沈み易し 人の高潔を信ずる無く、誰が為にかわ予が心を表さん 秋(あき)、蟬(せみ)の鳴(なき)き声(こえ)がひびく(今)、南方(なんぽう)からのとらわれ人であるわたしの異郷(いきょう)にある思(おも)いはことさらに深(ふか)くなる。 黒(くろ)いびんの毛(け)のように薄(うす)い羽(は)の蟬(せみ)が、獄窓近くにやって来(き)て、白髪頭(しらがあたま)のわたしに向(む)かって鳴(な)くのに、耐(た)えることはできないのだ。 秋の露(つゆ)は重(おも)いので、飛(と)ぼうとしても進(すす)むことは難(むず)しく、風(かぜ)がしきりなので、その鳴(な)く声(こえ)のひびきも沈(しず)みがちである。その蟬(せみ)の姿(すがた)が、今(いま)のわたしの姿(すがた)そのままなのだ。 一人(ひとり)としてわたしの高(たか)く清(きよ)らかな心(こころ)を信(しん)じてくれるものはない今、いったい誰(だれ)にそのわたしの心(こころ)を表(あらわ)したらよいのであろうか。 秋、蟬の鳴き声がひびく、南方からのとらわれ人であるわたしの異郷にある思いはことさらに深くなる。 黒いびんの毛のように薄い羽の蟬が、獄窓近くにやって来て、白髪頭のわたしに向かって鳴くのに、耐えることはできないのだ。 秋の露は重いので、飛ぼうとしても進むことは難しく、風がしきりなので、その鳴く声のひびきも沈みがちである。その蟬の姿が、今のわたしの姿そのままなのだ。 一人としてわたしの高く清らかな心を信じてくれるものはない今、いったい誰にそのわたしの心を表したらよいのであろうか。 秋が来て鳴く蝉の声きけば 拘われぴとは懐郷の思いが深い 黒い蝉の姿がしのびよって 白髪の私に向かって鳴くのが堪えられぬ 露重ければ飛び立ちかね 風強ければその声は消され易い いさぎよい心を信ずるものはなく 誰か私の心をあらわしてくれよぅ 西陸(せいりく) 蟬声(ぜんせい)唱(とな)え 南冠(なんかん) 客思(かくし)深し 堪(た)えず玄鬢(げんびん)の影 来たりて白頭に対して吟ずるに 露重くして飛べども進み難(がた)く 風多くして響き沈み易(やや)し 人の高潔を信ずる無し 誰(た)が為にか予(よ)が心を表(ひょう)せん 西陸 蟬声唱え 南冠 客思深し 堪えず玄鬢の影 来たりて白頭に対して吟ずるに 露重くして飛べども進み難く 風多くして響き沈み易し 人の高潔を信ずる無し 誰が為にか予が心を表せん |