題名: | 峴山懷古 |
作者: | 陳子昂 |
秣馬臨荒甸,登高覽舊都。猶悲墮淚碣,尚想臥龍圖。城邑遙分楚,山川半入吳。丘陵徒自出,賢聖幾凋枯。野樹蒼煙斷,津樓晚氣孤。誰知萬里客,懷古正躊躕。 | |
英譯: | 暫無英譯內容 |
日譯: |
蜆山のあたりにやってきて、馬もひと休みさせてまぐざをあたえ、この田舎の風景に心ひかれた。高いところに登って舊都の襄陽を眺めた。有名な墮涙碑の前にたたずむと、昔の名士すでになく、その人と同じ悲しみをもよおしてくる。それにしても、ここらあたりの田園にかくれて百姓をしていた諸葛孔明のことも思い出される。この邊は町や村が散在して楚の領域ではあったが、かなたに見える山や川は半分は吳の領分にはいっていた。小高い丘は昔のままにつらなりそばだっているが、古來幾多の聖賢の士は朽ちた骨となり土くれとなってしまった。野原にならぶ立木には薄暗い靄がきれぎれにたなびいている。渡し場にある二階の建物がぽつんと一軒たっていて、夕方の氣配がさびしげである。このわたしは遠くからやってきた旅人だが、古のことを思うて萬感胸にせまって去りがたいとは、ここらあたりの人間は、かえって何も氣が つかないであろう。
馬(うま)に秣(まぐさか)うて 荒甸(くわうでん)に臨(のぞ)み、高(たか)きに登(のぼ)って舊都(きうと)を覽(み)る。猶(なほ) 悲(かな)しむ 堕涙(だるえ)の碣(けつ)。尚(なほ) 想(おも)ふ 臥龍(ぐわりょう)の圖(と)。城邑(じゃういふ) 遙(はるか)に楚(そ)を分(わか)ち、 山川(さんせん) 半(なかば) 吳(ご)に入(い)る。丘陵(きうりょう) 徒(いたづ)らに自(おのづか)ら出(い)で、聖賢(せいけん) 幾(いく)たびか凋枯(てうこ)す。野樹(やじゅ) 蒼煙(さうえん)斷(た)え、津樓(しんろう)晩氣(ばんき)孤(こ)なり。誰(たれ)か知(し)らん 萬里(ばんり)の客(かく)、古(いにしへ)を懐(おも)うて正(まさ)に踟躕(ちもう)するを。 馬に秣うて 荒甸に臨み、高きに登って舊都を覽る。猶 悲しむ 堕涙の碣。尚 想ふ 臥龍の圖。城邑 遙に楚を分ち、 山川 半 吳に入る。丘陵 徒らに自ら出で、聖賢 幾たびか凋枯す。野樹 蒼煙斷え、津樓晩氣孤なり。誰か知らん 萬里の客、古を懐うて正に踟躕するを。 |