題名: | 宿溫城望軍營 |
作者: | 駱賓王 |
虜地寒膠折,邊城夜柝聞。兵符關帝闕,天策動將軍。塞靜胡笳徹,沙明楚練分。風旗翻翼影,霜劍轉龍文。白羽搖如月,青山斷若雲。煙疎疑卷幔,塵滅似銷氛。投筆懷班業,臨戎想顧勳。還應雪漢恥,持此報明君。 | |
英譯: | 暫無英譯內容 |
日譯: |
北方蠻族の住むこの地方では膠も凍って折れるという寒さのきびしさ。このときに乗じて彼らの侵略してくる危險が多いので油斷がならない。國境にあるこの町では夜になると非常をいましめる拍子木の音が聞こえる。ここを守る將軍は朝廷から兵馬の權をまかされ、國策を遂行する重大な任務をぅけたまわっている。要塞は靜まりかえっていて、胡笳のしらべがひびきわたり、沙漠が白々と反射して、兵士の着ている練ぎぬの外套もよく見える。風をはらんだ旗がひるがえり、霜と冴えた劍にぎちぎらと龍の模様が走っている。白羽の扇を動かして指揮するのが月のように見え、青山は遠くにつらなって、そのはては千切れて雲のようにぼやけている。きれぎれにたなびく靄は幔幕を巻いたかと疑われ、砂塵もあがらず戦亂の氣も消えうせたかと思われる。目のさきの光景からいえば、まことに平和が到來しているかのようだ。しかし、ほんとうにそうであろうか。自分は文筆を投げすてて後漢の班超のように異國におもむいて大功をたてたい意思はある。またすくなくとも國内において軍をひきいて、かの天下をねらぅ亂賊を鎮定した晋の顧榮のような勳功を望んでいる。それというのも、國境地帶に對する北方蠻族のほしいままな侵略を坐視することができないからだ。侵入者を徹底的に撃滅して、わが國辱をそそぎ、それによってわが聖天子の御恩にむくいようではないか。
虜地(りょち) 寒膠(かんかう)折(を)れ、邊城(へんじゃう) 夜(や)柝(たく)聞(きこ)ゆ。兵符(へいふ) 帝闕(ていけつ)に關(くわん)し、天策(てんさく) 將軍(しゃうぐん)を動(うご)かす。塞(さい) 靜(じづか)にして胡(こ)笳(こ)徹(とほ)り、沙(いさご) 明(あきら)かにして楚(そ)練(れん)分(わか)る。風旗(ふうき) 翼影(よくえい)を翻(ひるがへ)し、霜劍(さうけん) 龍文(りょうもん)を轉(てん)す。白羽(はくう) 搖(ゆら)いで月(つき)の如(ごと)く、青山(せいざん) 斷(た)えて雲(くも)の如(ごと)し。煙(けむり)ぱ疎(そ)にして幔(まん)を巻(ま)くかと疑(うたが)び、塵(ちり)は滅(めつ)して氛(ふん)を銷(け)すに似(に)たり。筆(ふで)を投(とう)じて班業(はんげふ)を懐(おも)ひ、戎(じゅう)に臨(のぞ)んで顧勲(こくん)を想(おも)ふ。還(また) 應(まさ)に漢(かん)の恥(はぢ)を雪(すす)ぎ、此(こ)れを持(ぢ)して明君(めいくん)に報(はう)ずべし。 虜地 寒膠折れ、邊城 夜柝聞ゆ。兵符 帝闕に關し、天策 將軍を動かす。塞 靜にして胡笳徹り、沙 明かにして楚練分る。風旗 翼影を翻し、霜劍 龍文を轉す。白羽 搖いで月の如く、青山 斷えて雲の如し。煙ぱ疎にして幔を巻くかと疑び、塵は滅して氛を銷すに似たり。筆を投じて班業を懐ひ、戎に臨んで顧勲を想ふ。還 應に漢の恥を雪ぎ、此れを持して明君に報ずべし。 |