題名: | 春宮怨 |
作者: | 杜荀鶴 |
早被嬋娟誤,欲妝臨鏡慵。承恩不在貌,教妾若爲容。風暖鳥聲碎,日高花影重。年年越溪女,相憶採芙蓉。 | |
英譯: |
Since long ago her beauty proved her devastation,
She pauses now, weary before the glass at her toilette:
So little favor has been won from her appearance,
Why should the concubine still labor to be lovely?
In the warm breeze, the calls of birds grow raucous;
The sun is high, and shadows of the flowers deepen.
Year after year, 000 the recollections
Of $maidens$ plucking lotus by the Yue stream.
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日譯: |
思えば始めから
自分の美貌ゆえに
我れと我が身を誤った
今では統に向かって化粧するさえ
ものうくなったこの私
君の御恩を受けるのは かたも
容貌ばかりではなかったのだ
だのになぜ私は
美しくなることばかり
顧ってきたのだろう
風はあたたかく
鳥の声は入りまじり
日は高く
花の影は重なる
今にして想えば
越の谷川の紗洗いから
呉宮にはいった西施のように
春来るごとにつれ立って
芙蓉を採っていたあの頃の
憂いの無さが懐しい
早く嬋娟(せんけん)に誤まられ 粧(よそお)わんと欲(ほっ)して鏡(かがみ)に臨(のぞ)んで慵(ものう)し 恩(おん)を承(う)くるは貌(かたち)に在(あ)らず 妾(しょう)をして若為(いかん)ぞ容(かたちづ)くらしめたる 風(かぜ)暖(あたた)かにして 鳥声(ちょうせい)砕(くだ)け 日(ひ)高うして 花影(かえい)重(かさ)なる 年年(ねんねん) 越渓(えつけい)の女(じょ) 相億(あいおも)う 芙蓉(ふよう)を采(と)りしを 早く嬋娟に誤まられ 粧わんと欲して鏡に臨んで慵し 恩を承くるは貌に在らず 妾をして若為ぞ容くらしめたる 風暖かにして 鳥声砕け 日高うして 花影重なる 年年 越渓の女 相億う 芙蓉を采りしを 若い時に美貌であったためにそれをたのんで、わが身を誤らされることとなってしまい、今は化粧しようとして鏡を前にしても、けだるく気の進まないことだ。 君寵をこうむることになったのは、容貌の美しさばかりではないはず。それなのにわたしに、どうして化 粧ばかりをさせようとしたのか。 春の風は暖かく、小鳥の鳴く声は、くだけ散るように、あちらこちらから聞こえてきて、真昼の太陽は高 く照って咲く花のかげが濃く重なりあっている。 毎年、越の若耶渓の女西施のように、蓮の花を採っていた昔を、今はただ思い出すぱかりである。 早(つと)に嬋娟(せんけん)たるに誤(あやま)らしめられ、妝(よそほ)はんと欲(ほつ)して 鏡(かがみ)に臨(のぞ)みて慵(ものう)し 恩(おん)を承(う)くるは 貌(かたち)に在(あ)らず、妾(しょう)をして若為(いかん)ぞ 容(かたちづく)らしめたる 風暖(かぜあたた)かくして 鳥声(ちょうせい)砕(くだ)け、日高(ひたか)くして 花影(かえい) 重(かさ)なる 年年(ねんねん) 越渓(えつけい)の女(じょ)、相憶(あひおも)ふ 芙蓉(ふよう)を采(と)りしを 早に嬋娟たるに誤らしめられ、妝はんと欲して 鏡に臨みて慵し 恩を承くるは 貌に在らず、妾をして若為ぞ 容らしめたる 風暖かくして 鳥声砕け、日高くして 花影 重なる 年年 越渓の女、相憶ふ 芙蓉を采りしを |