題名: | 涼思 |
作者: | 李商隱 |
客去波平檻,蟬休露滿枝。永懷當此節,倚立自移時。北斗兼春遠,南陵寓使遲。天涯占夢數,疑誤有新知。 | |
英譯: |
When he left, the waves were Aush with the railing;
now cicadas are silent and branches full of dew,
and I keep on remembering at a time like this,
leaning here while seasons pass.
For the North Star too, spring is far away;
too late to send couriers to your southern hill.
At the sky's edge, over and over I question my dreams,
wondering if you haven't found someone new.
When he left, the waves were flush with the railing; now cicadas are silent and branches full of dew, and I keep on remembering at a time like this, leaning here while seasons pass. For the North Star too, spring is far away; too late to send courtiers to your southern hill, At the sky's edge, over and over I question my dreams, wondering if you haven't found someone new. |
日譯: |
君去って秋水欄干に平らかに
蟬の声衰えて白露枝に満つるとき
心は君を懐うてやまず
ひとり欄干によって時を忘れる
君は北斗かがやく彼方に
春の日の想い出とともに遠くなり
私は南陽に居て待てど待てど
君は便りも寄せて来ぬ
地の果てにいて繰り返し夢を占い
もしやそちらに新しい知己が
できたのではないかと心うたがう
客去って 波(なみ) 檻(かん)に平(たい)らかに 蟬(せみ)休(や)んで 露(つゆ) 枝(えだ)に満(み)つ 永懐(えいかい) 此(こ)の節(せたう)に当たり 倚立(いりつ) 自(おの)ずから時を移(うつ)す 北斗(ほくと) 春と兼(とも)に遠く 南陵(なんりょう) 使(つか)いを寓(ぐう)すること遅(おそ)し 天涯(てんがい) 占夢(せんむ)数(しばしば)なり 疑誤(ぎご)す 新知(しんち)有りやと 客去って 波 檻に平らかに 蟬休んで 露 枝に満つ 永懐 此の節に当たり 倚立 自ずから時を移す 北斗 春と兼に遠く 南陵 使いを寓すること遅し 天涯 占夢数なり 疑誤す 新知有りやと 旅人である君が立ち去ったのは、波立つ春の水が、水檻と同じ高さに広がって見えたころであったが、今は蝉の鳴き声も聞こえなくなって、秋の夜の露が枝にいっぱいに見える季節となった。 いつまでも続く君への思いは、この初秋の季節においてこそつのるのであって、水檻にもたれかかり、たたずんで、わたしはそのまま時を過ごしてしまうのである。 北斗七星は、すでに過ぎ去った春とともに、はるかに遠ざかり、ここ南陵の地に君は、手紙を託して送ることも、もどかしいほどに遅い。天の果てともいうべき、都からはるかに遠いこの南陵の地にあって、夢占いをくり返すのだが、その夢占いが、わたしの判断をとまどわせ誤らせるのは、君に新たな知己が生まれて、このわたしを忘れてしまったのではないかということ。 客去(かくさ)りて 波(なみ) 檻(かん)に平(たひ)らかに、蟬休(せみや)みて 露(つゆ) 枝(えだ)に満(み)つ 永懐(えいかい) 此(こ)の節(せつ)に当(あ)たり、倚立(いりつ) 自(おのづか)ら時(とき)を移(うつ)す 北斗(こくと) 春(はる)と兼(とも)に遠(とほ)く、南陵(なんりょう)使(つか)ひを寓(ぐう)すること遅(おそ)し 天涯(でんがい) 占夢(せんむ)数々(しばしば)なり、疑(ぎ)誤(ご)す 新知(しんち)有(あ)りやと 客去りて 波檻平らかに、蟬休みて 露 枝に満つ 永懐 此の節に当たり、倚立 自ら時を移す 北斗 春と兼に遠く、南陵使ひを寓すること遅し 天涯 占夢数々なり、疑誤す 新知有りやと |