題名: | 春雨 |
作者: | 李商隱 |
悵臥新春白袷衣,白門寥落意多違。紅樓隔雨相望冷,珠箔飄燈獨自歸。遠路應悲春晼晚,殘宵猶得夢依稀。玉璫緘札何由達,萬里雲羅一雁飛。 | |
英譯: |
Lying disconsolate in new spring white wadded robes,
by white gates lost and lonely, my wish too much denied:
a red pavilion beyond the rainㅡ we watch each other coldly;
pearl blinds, a torch that flickers—she comes home alone.
A long road is grief enough in spring dusk and evening;
what's left of the night still offers me phantoms of a dream.
Jade earrings, a sealed letter—how to get them through?
Ten thousand miles of cloud gauze, a wild goose winging.
Lying disconsolate in new spring white wadded robes, by white gates lost and lonely, my wish too much denied: a red pavilion beyond the rain— we watch each other coldly; pearl blinds, a torch that flickers— she comes home alone. A long road is grief enough in spring dusk and evening; what's left of the night still offers me phantoms of a dream. Jade earrings, a sealed letter— how to get them through ? Ten thousand miles of cloud gauze, a wild goose winging. New, the white-lined clothes of spring, in which I sadly lie. The White Gate is desolate, and desire unfulfilled. In the rain, how cold Red Mansions seemed. To the flickering light behind the screen of pearl, I returned alone. So far away, you must lament spring's passing, Dreaming vague dreams for the remainder of the night. How to send this letter, this jade pendant? Through an endless maze of cloud our wild goose would have to fly. |
日譯: |
春になり白い袷をまといつつ
あわせ 心かなしく臥せっている
白門の佗住居は
なにごとも心に添わぬ
雨を隔てて紅楼は
冷やかに望まれ
珠簾にゆらぐ灯し火は
あのひとがひとり帰ってきているのか
とおく離れて春の逝くを悲しみ
夜更けてなおおぼろに君を夢みる
耳玉や手紙を送ろうにも
どうして伝えることができようか かうがね
万里空ゆく雁一羽
空しく眺めやるぱかり
悵臥(ちょうが) 新春 白袷衣(はくこうい) 白門(はくもん) 寥落(りょうらく) 意(い)多く違(たが)う 紅楼 雨(あめ)を隔(へだ)てて相(あい)望むこと冷(ひや)やかに 珠箔(しゅはく) 燈(とう)を飄(ひるがえ)して独自(ひとり)帰る 遠路 応(まさ)に悲しむべし 春晼晚(はるえんばん) 残宵(ざんしょう) 猶(なお)得たり 夢(ゆめ)依稀(いき)たるを 玉璫(ぎょくとう) 緘札(かんさつ) 何に由ってか達せん 万里 雲羅(うんら) 一雁(がん)飛ぶ 悵臥 新春 白袷衣 白門 寥落 意多く違う 紅楼 雨を隔てて相望むこと冷やかに 珠箔 燈を飄して独自帰る 遠路 応に悲しむべし 春晼晚 残宵 猶得たり 夢依稀たるを 玉璫 緘札 何に由ってか達せん 万里 雲羅 一雁飛ぶ わたしは、新年の春だというのに、白いあわせのふだん着を着て、悲しみを抱いて横たわっている。粗末なわが家はものさびしく、何もかもわが志に反することばかりだからである。 あなたの住む朱塗りの高殿は、春の雨の向こうに冷たく眺めやられて、玉飾りのすだれに風がともしびをゆるがしているのが映じていたが、それを後にして、わたしは自分ひとり帰って来たものだった。 あなたは、今遠い道のりのかなたで春の日が昏れてゆくのを悲しんでいるのであろう。夜明けに、それでも夢の中でよく似た姿をぼんやりと見ることができる。 玉の耳飾りと手紙とを、どのようにして送り届けようか。はるか万里の薄絹のような雲の中に、あの手紙を運ぶ鳥とされる一羽のがんが飛んでいるのが見えるばかりだ。 悵臥(ちょうが)す 新春(しんしゅん)白袷衣(はくこうい) 白門(はくもん) 寥落(りょうらく)として 意多く(いおほ)違(たが)ふ 紅楼(こうろう) 雨(あめ)を隔(へだ)てて 相望(あひのぞ)むこと冷(ひや)かに 珠箔(しゅはく) 灯(ともしび)を飄(ひるがへ)して 独(ひと)り自(みづか)ら帰(かへ)る 遠路(えんろ) 応(まさ)に悲(かな)しむべし 春(はる)の晼晚(えんばん)たるを 残宵(ざんしょう) 猶(な)ほ得(え)たり 夢(ゆめ)に依稀(いき)たるを 玉(ぎょく) 璫(とう) 緘札(かんさつ) 何(なに)に由(よ)りてか達(たつ)せん 万里(ばんり) 雲羅(うんら) 一雁(いちがん)飛(と)ぶ 悵臥す 新春白袷衣 白門 寥落として 意多く違ふ 紅楼 雨を隔てて 相望むこと冷かに 珠箔 灯を飄して 独り自ら帰る 遠路 応に悲しむべし 春の晼晚たるを 残宵 猶ほ得たり 夢に依稀たるを 玉と璫 緘札 何に由りてか達せん 万里 雲羅 一雁飛ぶ 新春なのに白い給せを着て、髪いつつ横になっている。 あなたと密会した白門は寂びれはて、私の気持ちにそぐわぬことばかり。 あの時は、あなたの住まう紅楼を雨の向こうに眺めるといやに冷ややかで、 真珠のが灯火に照らされ翻るのを後にして、ひとり寂しく帰ったのだった。 いま、遠路のかなたで、あなたはきっと春日が暮れゆくのを悲しんでいよう。 夜明け前にやっとまどろんだ夢で、まだおぼろげにあなたの姿が見える。 玉の耳飾りを添えた手紙を、あなたにどうして届ければよいのか。万里に広がる雨雲に、便りを運ぶ雁一羽が飛びゅくのを見送るばかり。 悵臥(ちょうが)す 新春(しんしゅん) 白袷衣(はくこうい) 白門(はくもん) 寥落(りょうらく) 意(い)多(おお)く違(たが)う 紅楼(こうろう) 雨(あめ)を隔(へだ)てて相(あ)い望(のぞ)めば冷(ひ)ややかに 珠箔(しゅはく) 燈(とう)に飄(ひるがえ)って独自(どくじ)に帰(かえ)る 遠路(えんろ) 応(まさ)に悲(かな)しむべし 春(はる)の晼晚(えんばん)たるを 残宵(ざんしょう) 猶(な)お得(え)たり 夢(ゆめ)の依稀(いき)たるを 玉璫(ぎょくとう) 緘札(かんさつ) 何(なん)に由(よ)りてか達(たっ)せん 万里(ばんり)の雲羅(うんら) 一雁(いちがん)飛(と)ぶ 悵臥す 新春 白袷衣 白門 寥落 意多く違う 紅楼 雨を隔てて相い望めば冷ややかに 珠箔 燈に飄って独自に帰る 遠路 応に悲しむべし 春の晼晚たるを 残宵 猶お得たり 夢の依稀たるを 玉璫 緘札 何に由りてか達せん 万里の雲羅 一雁飛ぶ |