題名: | 早春獨遊曲江 |
作者: | 白居易 |
散職無羈束,羸驂少送迎。朝從直城出,春傍曲江行。風起池東暖,雲開山北晴。冰銷泉脈動,雪盡草芽生。露杏紅初坼,煙楊綠未成。影遲新度鴈,聲澀欲啼鶯。閑地心俱靜,韶光眼共明。酒狂憐性逸,藥效喜身輕。慵慢疎人事,幽棲逐野情。迴看芸閣笑,不似有浮名。 | |
英譯: | 暫無英譯內容 |
日譯: |
閑職の校書郎なので束縛もなく、乗るやせ馬は送迎する人もまれである。朝に宿直室から出て、曲江の岸にゆく。春風が池の東からあたたかに吹き、雲が散って終南山の北は晴れた。氷がとけて泉が流れだし、雪がきえて草の芽がもえる。露を帯びたアンズの花が赤く咲きそめ、霞のかかった柳ばまだ緑の芽がそろわぬ。渡って来はじめた雁はまだすくなく、ウグイスの初音はまだしぶりがちだ。閑職にいるおかげで心は平静で、春光とともに目もあきらかだ。酒に酔って気のたつのをみずから憐れみ、薬のききめで健康なのを喜んでいる。なまけもので世間のことはいいかげんにし、しずかに住んで野人の気持ちをとおす。役所のことを思いだすと笑いたくなるが、これでは秀才の評判などうそのようだ。
散職(さんしょく) 羈束(きそく)なく、贏驂(るえさん) 送迎(そうげい)少(すくな)し。朝(あさ)に直(ちょくじゃう) 城(じゃう)より出(い)で、春(はる) 曲江(きょくかう)に傍(そ)ひて行(い)く。風(かせ)起(おこ)って池(ち)東暖(とうあたた)かに、雲(くも)開(ひら)いて山北(さんぼく)晴(は)る。冰(こほり)銷(と)けて泉脈(せんみゃく)動(うご)き、雪(ゆき)盡(つ)きて草芽(さうが)生(しゃう)ず。露杏(ろきゃう) 紅(くれない)はじめて拆(ひら)き、煙楊(えんやう) 綠(みどり)いまだ成(な)らず。影(かげ)は遅(おそ)し新(あらた)に度(わた)る雁(がり)、聲(こえ)は澁(しぶ)る啼(な)かんと欲(ほつ)する鶯(うぐひす)。閑地(かんち) 心(こころ)ともに静(しず)かに、韶光(せうくわう) 眼(まなこ)ともに明(あきら)かなり。酒狂(しゅきゃう) 性(せい)の逸(いつ)するを憐(あはれ)み、藥效(やくきゃう) 身(み)の軽(かろ)きを喜(よろこ)ぶ。慵慢(ようまん) 人事(じんじ)を疏(うと)んじ、幽棲(いうせい) 野情(やじゃう)を遂(と)ぐ。廻(かへ)って芸閣(うんかく)を看(み)て笑(わた)ふ、浮名(ふめい)あるに似(に)ず。 散職 羈束なく、贏驂 送迎少し。朝に直 城より出で、春 曲江に傍ひて行く。風起って池東暖かに、雲開いて山北晴る。冰銷けて泉脈動き、雪盡きて草芽生ず。露杏 紅はじめて拆き、煙楊 綠いまだ成らず。影は遅し新に度る雁、聲は澁る啼かんと欲する鶯。閑地 心ともに静かに、韶光 眼ともに明かなり。酒狂 性の逸するを憐み、藥效 身の軽きを喜ぶ。慵慢 人事を疏んじ、幽棲 野情を遂ぐ。廻って芸閣を看て笑ふ、浮名あるに似ず。 |