題名: | 過昭君村 |
作者: | 白居易 |
靈珠產無種,彩雲出無根。亦如彼姝子,生此遐陋村。至麗物難掩,遽選入君門。獨美衆所嫉,終棄出塞垣。唯此希代色,豈無一顧恩。事排勢須去,不得由至尊。白黑既可變,丹青何足論。竟埋代北骨,不返巴東魂。慘澹晚雲水,依稀舊鄉園。妍姿化已久,但有村名存。村中有遺老,指點爲我言。不敢往者戒,恐貽來者冤。至今村女面,燒灼成瘢痕。 | |
英譯: | 暫無英譯內容 |
日譯: |
真珠は種子なくして生じ、五色の雲にも根はない。
それゆえあの王昭君のような美人が、この片いなかに生まれた。 その非常な美しさは世にかくれようもなく、急に天子の宮中に選ばれてはいった。
しかしただひとり美しいのでみなから妬まれ、ついにとりでの外の匈奴にやられた。
思えば絶世の美人だから、天子に愛されるはずだった。
時勢でやむを得ず去ったので、天子の御意によったのではない。 白を黒にすることもできるから、絵など問題にする必要もない。
ついに彼女は骨を他州の北に埋め、故郷の巴東には魂さえ帰って来なかった。
悲しげな夕方の雲と水のいろ、美人の故郷はむかしながらだ。 美しい姿は消えてはるかに、昭君村という名だけがのこっている。 村の老人が、指さし示していってくれた。
「昔のことを戒めにしなければ、将来のうれいをのこすことになる。 そこで今でも村の娘たちの顔は、焼いてきずあとを作っています」と。
靈珠(れいしゅ) 産(さん)するに種(たね)なく、 彩雲(さいうん) 出(い)づるに根(ね)なし。 またかの姝子(しゅし)のごとき、 この遐陋(かろう)の村(うら)に生(うま)る。 至麗(しれい)にして物(もの) 掩(おほ)ひがたく、 遽(にはか)に選(えら)ばれて君門(くんもん)に入(い)る。 ひとり美(び)にして衆(しゅう)に嫉(ねた)まれ、 終(つひ)に塞垣(さいえん)に棄(す)てらる。 ただこの希代(きだい)の色(いろ)、 あに一顧(いっこ)の恩(おん)なからんや。 事排(ことはい)して勢(いきほひ)ずべからく去(さ)るべ、 至尊(しそん)に由(よ)るを得(え)ず。 白黑(はくこく)すでに變(へん)ずべし、 丹青(たんせい)なんぞ論(ろん)ずるに足(た)らん。 つひに代北(だいほく)に骨(ほね)を埋(うづ)め、 巴東(はとう)に魂(たましひ)を返(かへ)さず。 慘澹(さんたん)たり晩雲水(ばんうんすい)、 依稀(いき)たり舊鄉園(きうきゃうえん)。 妍姿(けんし) 化(くわ)してすでに久(ひさ)しく、 ただ村名(そんめい)の存(そん)するあり。 中(そんちゅう)に遺老(いらう)あり、 指點(してん)してわがために言(い)ふ。 「往者(わうしゃ)の戒(いましめ)を取(と)らずんぱ、 恐(おそ)らくは來者(らいしゃ)の寃(えん)を貽(のこ)さん。 今(いま)に至(いた)るまで村女(そんぢょ)の面(めん)、 燒灼(せうしゃく)して瘢痕(はんこん)を成(な)す」と。 靈珠 産するに種なく、 彩雲 出づるに根なし。 またかの姝子のごとき、 この遐陋の村に生る。 至麗にして物 掩ひがたく、 遽に選ばれて君門に入る。 ひとり美にして衆に嫉まれ、 終に塞垣に棄てらる。 ただこの希代の色、 あに一顧の恩なからんや。 事排して勢ずべからく去るべ、 至尊に由るを得ず。 白黑すでに變ずべし、 丹青なんぞ論ずるに足らん。 つひに代北に骨を埋め、 巴東に魂を返さず。 慘澹たり晩雲水、 依稀たり舊鄉園。 妍姿 化してすでに久しく、 ただ村名の存するあり。 中に遺老あり、 指點してわがために言ふ。 「往者の戒を取らずんぱ、 恐らくは來者の寃を貽さん。 今に至るまで村女の面、 燒灼して瘢痕を成す」と。 |