題名: | 感情 |
作者: | 白居易 |
中庭曬服玩,忽見故鄉履。昔贈我者誰,東鄰嬋娟子。因思贈時語,特用結終始。永願如履綦,雙行復雙止。自吾謫江郡,漂蕩三千里。爲感長情人,提攜同到此。今朝一惆悵,反覆看未已。人隻履猶雙,何曾得相似。可嗟復可惜,錦表繡爲裏。況經梅雨來,色黯花草死。 | |
英譯: | 暫無英譯內容 |
日譯: |
庭に愛用の品々を虫干ししていて、ふと郷里の靴が目に止まった。
そのかみ、わたしに贈ってくれたのは誰であったか。それは東隣りの美しい少女。
折しも蘇るのは、贈られた時のことば、すべてがそこに言い尽くされていた。
「とこしえにこの靴のように、ともに進みともに止まりたいと念じています」
わたしは江州に貶諦され、さすらうこと三千里。
深いこの人の情けに感じて、携えてともにここまでやってきた。
今朝ふいに悲しみを覚え、繰り返して眺め続ける。
人は分かれても靴はまだそろいのまま。人と靴とは同じわけにはいかぬ。
嘆かわしく、また口惜しい。表は錦、裏は刺繍のこの靴。
ましてや梅雨を経て、色は黒ずみ草花模様も跡をとどめない無惨な姿。
中庭(ちゅうてい) 服玩(ふくがん)を曬(さら)し 忽(こつ)として故郷(こきょう)の履(くつ)を見(み)る 昔(むかし) 我(われ)に贈(おく)りし者(もの)は誰(たれ)ぞ 東隣(とうりん)の嬋娟子(せんけんし) 因(よ)りて思(おも)う 贈(おく)りし時(とき)の語(ご) 特(た)だ用(もっ)て終始(しゅうし)を結(むす)ぶ 永(とわ)に願(ねが)わくは履綦(りき)の如(ごと)く 双(なら)び行(ゆ)き復(ま)た双(なら)び止(と)まらんことをと 吾(われ) 江郡(こうぐん)に謫(たく)せられて自(よ)り 漂蕩(ひょうとう)すること三千里(さんぜんり) 長情(ちょうじょう)の人(ひと)に感(かん)ずるが為(ため)に 提携(ていけい)して同(とも)に此(ここ)に到(いた)る 今朝(こんしょう) 一(ひと)たび惆悵(ちゅうちょう)し 反覆(はんぷく)して看(み)ること未(いま)だ已(や)まず 人(ひと)は隻(せき)なるも履(くつ)は猶(な)お双(そう) 何(なん)ぞ曾(かつ)て相(あ)い似(に)るを得(え)ん 嗟(なげ)く可(べ)く復(ま)た惜(お)しむ可(べ)し 錦(にしき)の表(おもて) 繡(ぬいとり)もて裏(うら)と為(な)す 況(いわ)んや梅雨(ばいう)を経(へ)て来(より) 色(いろ)黯(くろ)くして花草(かそう)死(し)するをや 中庭 服玩を曬し 忽として故郷の履を見る 昔 我に贈りし者は誰ぞ 東隣の嬋娟子 因りて思う 贈りし時の語 特だ用て終始を結ぶ 永に願わくは履綦の如く 双び行き復た双び止まらんことをと 吾 江郡に謫せられて自り 漂蕩すること三千里 長情の人に感ずるが為に 提携して同に此に到る 今朝 一たび惆悵し 反覆して看ること未だ已まず 人は隻なるも履は猶お双 何ぞ曾て相い似るを得ん 嗟く可く復た惜しむ可し 錦の表 繡もて裏と為す 況んや梅雨を経て来 色黯くして花草死するをや 中庭で着物や手まわり品を太陽にさらしたが、ふと故郷からの履を見かけた。 これをむかし贈ってくれたのはだれだったか、東どなりの美人だ。 そこで思いだした、くれた時のことばを、「これ持ってて、一生の約束のしるしに。 どうぞこの履のひもとおなじく、どこへゆくにもふたりでゆくのですよ」 ぼくは江州に流されて、三千里はなれてさすろうことになった。 あの情の熱い美人が忘れられないで、ここまでわさわさ持って来た。 けさ見かけて悲しくなり、なんどもなんども見つめた。 人間は片輪になったのに履はまだ二つで、どうしてこの履にあやかれぬのだ。 かなしや残念だ、表はにしきで裏には刺編 しかも梅雨をこしたので、色は黒ずみ模様の花や草は枯れた。 中庭(ちゅうてい)に服玩(ふくぐわん)を㬠(さら)し、 たちまち故郷(こきゃう)の履(くつ)を見(み)る。 むかしわれに贈(おく)りし者(もの)は誰(た)ぞ、 東鄰(とうりん)の嬋娟子(せんけんし)。 よりて思(おも)ふ贈時(そろじ)の語(ご)、 「持(ぢ)してもって終始(しゅうし)を結(むす)ばん。 永(なが)く願(ねが)はくは覉綦(りき)のごとく、 雙(なら)び行(ゆ)きまた雙(なら)び止(とど)まらんことを」と。 われ江郡(かうぐん)に謫(たく)せられてより、 漂蕩(へうたう)すること三千里(さんぜんり)。 長情(ちゃうじゃう)の人(ひと)に感(かん)ずるがために、 提攜(ていけい)してともにここに到(いた)る。 今朝(こんてう)ひとたび惆帳(ちうちゃう)し、 反覆(はんぶく) 看(み)ることいまだ已(や)まず。 人(ひと)は隻(せき)にして履(くつ)なほ雙(なら)ぶ、 なんぞかつて相似(あひに)るを得(え)ん。 嗟(なげ)くべくまた惜(をし)むべし、 錦(にしき)の表(おもて) 繡(しう)を裏(うら)となす。 いはんや梅雨(ばいう)を經(へ)て來(きた)り、 色(いろ)黯(くろ)くして花草死(くわさうか)るをや。 中庭に服玩を㬠し、 たちまち故郷の履を見る。 むかしわれに贈りし者は誰ぞ、 東鄰の嬋娟子。 よりて思ふ贈時の語、 「持してもって終始を結ばん。 永く願はくは覉綦のごとく、 雙び行きまた雙び止まらんことを」と。 われ江郡かうぐんに謫せられてより、 漂蕩すること三千里。 長情の人に感ずるがために、 提攜してともにここに到る。 今朝ひとたび惆帳し、 反覆 看ることいまだ已まず。 人は隻にして履なほ雙ぶ、 なんぞかつて相似るを得ん。 嗟くべくまた惜むべし、 錦の表 繡を裏となす。 いはんや梅雨を經て來り、 色黯くして花草死るをや。 |