題名: | 新栽竹 |
作者: | 白居易 |
佐邑意不適,閉門秋草生。何以娛野性,種竹百餘莖。見此溪上色,憶得山中情。有時公事暇,盡日繞闌行。勿言根未固,勿言陰未成。已覺庭宇內,稍稍有餘清。最愛近窗臥,秋風枝有聲。 | |
英譯: |
Unrewarded, my will to serve the State;
At my closed door autumn grasses grow.
What could I do to ease a rustic heart?
I planted bamboos, more than a hundred shoots.
When I see their beauty, as they grow by the stream-side,
I feel again as though I lived in the hills,
And many a time on public holidays
Round their railing I walk till night comes.
Do not say that their roots are still weak,
Do not say that their shade is still small;
Already I feel that both in garden and house
Day by day a fresher air moves.
But most I love, lying near the window-side,
To hear in their branches the sound of the autumn-wind.
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日譯: |
県尉になったが不快なので、門をとじていると庭には秋草がはえた。なにでこの粗野な性質を満たしているかといえば、竹を百本あまり植えた。この階にそった竹のすがたを見ていると、山中にいる気持ちとなる。ときどき仕事のひまな日は、一日じゅうてすりのまわりを竹を見てあるく。竹の根がまだ固まっていない、かげがふかくないなど問題ではない。もはや庭には、清涼の気ができて来たように思う。とりわけうれしいことは窓ぎわにねると、秋風が枝にあたって声をたてるのだ。
邑(いふ)に佐(さ)たり意適(いかな)はず、門(もん)を閉(と)ぢて秋草(しうさう)生(しゃう)ず。何(なに)をもってか野性(やせい)を娛(たのし)ましむる、竹(たけ)を種(う)うること百餘莖(ひゃくよけい)。この階上(かいじゃう)の色(いろ)を見(み)て、山中(さんちゅう)の情(じゃう)を憶(おも)ひ得(え)たり。時(とき)ありてか公事(こうじ)の暇(いとま)、盡日(ひねもす) 欄(らん)を繞(めぐ)りて行(ゆ)く。言(い)ふなかれ根(ね)いまだ固(かた)まらずと、言(い)ふなかれ陰(かげ)いまだ成(な)らずと。すでに覺(おぼ)ゆ庭宇(ていう)の内(うち)、稍稍(やや)に餘清(よせい)あるを。最(もっと)も愛(あい)す窗(まど)に近(ちか)く臥(ふ)せば、秋風(しうふう) 枝(えだ)に聲(こえ)あるを。 邑に佐たり意適はず、門を閉ぢて秋草生ず。何をもってか野性を娛ましむる、竹を種うること百餘莖。この階上の色を見て、山中の情を憶ひ得たり。時ありてか公事の暇、盡日 欄を繞りて行く。言ふなかれ根いまだ固まらずと、言ふなかれ陰いまだ成らずと。すでに覺ゆ庭宇の内、稍稍に餘清あるを。最も愛す窗に近く臥せば、秋風 枝に聲あるを。 ちっぽけな町でのお役所勤めは気の晴れないものだ。門をとざして秋草(あきぐさ)の生えるに任せておく。自然を求める心のねがいをどうして叶えたものか。竹を百本ばかりそこでわたしは植えてみた。庭に石走(いわぼし)る流れのほとり、この緑にさ揺らぐものが わたしを駆り立てて遠く山中に住むの思いを抱(いだ)かせる。たまたま公(おおやけ)の仕事がひまな折りなどには 竹の園(その)を行きつ戻りつひと日を暮らす。「未だしっかり根附いていはすまい」とか、未だ蔭らしい蔭も出来ておらん」とか冷かさないで それと眼にとまらなくても庭のおもてに、家のうちに 清々(すがすが)しさのけはいの忍び寄るのが感じられる。わたしにとって一番愉(たの)しいのは窓のすぐ側で横になるひと時だ。秋風が群竹(むらたけ)の枝をわたるのが聞えてくるから。 ちっぽけな町でのお役所勤めは気の晴れないものだ。門をとざして秋草の生えるに任せておく。自然を求める心のねがいをどうして叶えたものか。竹を百本ばかりそこでわたしは植えてみた。庭に石走る流れのほとり、この緑にさ揺らぐものが わたしを駆り立てて遠く山中に住むの思いを抱かせる。たまたま公の仕事がひまな折りなどには 竹の園を行きつ戻りつひと日を暮らす。その 「未だしっかり根附いていはすまい」とか、未だ蔭らしい蔭も出来ておらん」とか冷かさないで それと眼にとまらなくても庭のおもてに、家のうちに 清々しさのけはいの忍び寄るのが感じられる。わたしにとって一番愉しいのは窓のすぐ側で横になるひと時だ。秋風が群竹の枝をわたるのが聞えてくるから。 |