題名: | 東園玩菊 |
作者: | 白居易 |
少年昨已去,芳歲今又闌。如何寂莫意,復此荒涼園。園中獨立久,日澹風露寒。秋蔬盡蕪沒,好樹亦凋殘。唯有數叢菊,新開籬落間。攜觴聊就酌,爲爾一留連。憶我少小日,易爲興所牽。見酒無時節,未飲已欣然。近從年長來,漸覺取樂難。常恐更衰老,強飲亦無歡。顧謂爾菊花,後時何獨鮮。誠知不爲我,借爾暫開顏。 | |
英譯: |
The days of my youth left me long ago;
And now in their turn dwindle my years of prime.
With what thoughts of sadness and loneliness
I walk again in this cold, deserted place!
In the midst of the garden long I stand alone;
The sunshine, faint; the wind and dew chill.
The autumn lettuce is tangled and turned to seed;
The fair trees are blighted and withered away.
All that is left are a few chrysanthemum-flowers
That have newly opened beneath the wattled fence.
I had brought wine and meant to fill my cup,
When the sight of these made me stay my hand.
I remember, when I was young,
How easily my mood changed from sad to gay.
If I saw wine, no matter at what season,
Before I drank it, my heart was already glad.
But now that age comes,
A moment of joy is harder and harder to get.
And always I fear that when I am quite old
The strongest liquor will leave me comfortless.
Therefore I ask you, late chrysanthemum-flower
At this sad season why do you bloom alone?
Though well I know that it was not for my sake,
Taught by you, for a while I will open my face.
|
日譯: |
若く少(おさな)、かった歳月はすでに早く過ぎ去って、わが世の真盛(まさか)り、その芳(にお)わしい日々も今開(た)けようとしている。どうしても拭いきれない寂しさ、あじきなさ、それは又この荒れさびれた園生(そのう)のこころでもある。園のさ中に独り久しくたたずめば、弱い日差しのもと、吹く風、置く露みな冷たい。雑草にけおされて秋の蔬菜は姿をかくし、目を楽しませた樹も木の葉落ちた枝をさらけ出している。ただ数個所にかたまって伸び上がった菊が 籬(まがき)のもとに新らしく花をひらいた。さかずきを持ってきて少しばかり酒を酌み、菊よ、おまえが嬉しくて思わず時間を費すのだ。思えばわたしも、嘗(かつ)て若い日には たやすく気分は興(きょう)ある方(かた)へと引かれて行った。いちど酒を見せられると季節なんぞはお構いなし、まだ飲まないうちから心はすでに喜び勇んだ。齢のかたむくを覚えるようになった近頃では かりそめの楽しみもこれを楽しみ難(にく)くなると悟った。わたしの心配はこれから先もっと老い衰えたなら 強いて飲もうとも心は慰まないだろうことである。そこでつい話しかけたくなるが、菊の花よ、千草(ちぐさ)の衰えに後れて咲き続くその鮮かな姿はなにの力によるのか。 おまえがわたしのために咲いているのでないことは分かるが、 おまえに励まされて額(ひたい)のしわをわたしは伸ばそうと思う。
若く少かった歳月はすでに早く過ぎ去って、わが世の真盛り、その芳わしい日々も今開けようとしている。どうしても拭いきれない寂しさ、あじきなさ、それは又この荒れさびれた園生のこころでもある。園のさ中に独り久しくたたずめば、弱い日差しのもと、吹く風、置く露みな冷たい。雑草にけおされて秋の蔬菜は姿をかくし、目を楽しませた樹も木の葉落ちた枝をさらけ出している。ただ数個所にかたまって伸び上がった菊が 籬のもとに新らしく花をひらいた。さかずきを持ってきて少しばかり酒を酌み、菊よ、おまえが嬉しくて思わず時間を費すのだ。思えばわたしも、嘗て若い日には たやすく気分は興ある方へと引かれて行った。いちど酒を見せられると季節なんぞはお構いなし、まだ飲まないうちから心はすでに喜び勇んだ。齢のかたむくを覚えるようになった近頃では かりそめの楽しみもこれを楽しみ難くなると悟った。わたしの心配はこれから先もっと老い衰えたなら 強いて飲もうとも心は慰まないだろうことである。そこでつい話しかけたくなるが、菊の花よ、千草の衰えに後れて咲き続くその鮮かな姿はなにの力によるのか。 おまえがわたしのために咲いているのでないことは分かるが、 おまえに励まされて額のしわをわたしは伸ばそうと思う。 |