題名: | 西塞山懷古 |
作者: | 劉禹錫 |
西晉樓船下益州,金陵王氣黯然收。千尋鐵鎖沈江底,一片降旛出石頭。人世幾回傷往事,山形依舊枕江流。今逢四海爲家日,故壘蕭蕭蘆荻秋。 | |
英譯: |
$(When)$ the towered galleys of Wang Chun came from Yi-chou,
The royal air of Chin-ling retreated dull and dim.
A thousand leagues of iron links sank to the river's bed;
Flags of surrender rose in a file over the Wall of Stone.
$(So)$ many times in human life we grieve for bygone things:
The mountains' form, as long ago, lies pillowed on the cold flow.
Now all within the four seas has come under a single house,
$(And)$ the old battlements sigh forlornly in an autumn of reeds.
When Wang Jun's battleships swept down from Yizhou The mandate of the Jinling Kingdom was revoked. Ten thousand links of iron chain sank to the river bottom; A lone surrender flag appeared $above the city$ 000. Many times the human world regrets events of yesteryear; Mountains, as always, rest against $cold$ currents. Today all the lands are of a single nation. Around the old fortress, reeds rustle in the autumn breezes. |
日譯: |
晋(しん)の武将(ぶしょう)王濬(おうしゅん)の率(ひき)いる軍船(ぐんせん)が、長江(ちょうこう)上流(じょうりゅう)の益州(えきしゅう)から攻(せ)め下(くだ)って来(く)ると、昔(むかし)金陵(きんりょう)に立(た)ち上(のぼ)ったという王者(おうじゃ)の雲気(うんき)は、暗(くら)く黒々(くろぐろ)としている彼方(かなた)に消(き)え失せそこに都(みやこ)していた呉(くれ)の孫皓(そんこう)の権威(けんい)は失墜(しっつい)してしまった。
吳軍(ごぐん)の備(そな)えたという長(なが)い長(なが)い鉄製(てつせい)のくさりは、王濬(おうしゅん)の軍(ぐん)に焼(や)き切(き)られて、空(そら)しく江水(えみず)の底(そこ)に沈(しず)んでしまい、一本(いっぽん)の降旗(ふるはた)が孫皓(そんこう)の拠(よ)った石頭城(せきとうじょう)から出(で)て降服(こうふく)したのであった。
この人(ひと)の世(よ)では、この西塞山の地(ち)に幾度(いくど)か興亡(こうぼう)の歴史(れきし)をくり返(かえ)されて、その昔(むかし)のできごとに心(こころ)を痛(いた)ましめられるのであるが、西塞山の山容(さんよう)は、昔(むかし)と変(か)わることなく、この秋(あき)の冷(さめ)たい江水(えみず)の流(なが)れを前(まえ)にしてそびえ立(た)っているのだ。
今(いま)からは唐朝(とうちょう)によって統一(とういつ)されて天下(てんか)が一家(いっか)となる日(ひ)を迎(むか)えたのであるが、この古(ふる)いとりでには、あしやおぎの穂(ほ)に秋(あき)の風(かぜ)が、ものさびしく吹(ふ)きわたるばかりである。
晋の武将王濬の率いる軍船が、長江上流の益州から攻め下って来ると、昔金陵に立ち上ったという王者の雲気は、暗く黒々としている彼方に消え失せそこに都していた呉の孫皓の権威は失墜してしまった。 吳軍の備えたという長い長い鉄製のくさりは、王濬の軍に焼き切られて、空しく江水の底に沈んでしまい、一本の降旗が孫皓の拠った石頭城から出て降服したのであった。 この人の世では、この西塞山の地に幾度か興亡の歴史をくり返されて、その昔のできごとに心を痛ましめられるのであるが、西塞山の山容は、昔と変わることなく、この秋の冷たい江水の流れを前にしてそびえ立っているのだ。 今からは唐朝によって統一されて天下が一家となる日を迎えたのであるが、この古いとりでには、あしやおぎの穂に秋の風が、ものさびしく吹きわたるばかりである。 王濬(おうしゅん)の楼船(ろうせん) 益州(えきしゅう)より下(きだ)り 金陵(きんりょう)の王気(おうき)黯然(あんぜん)として収(おさ)まる 千尋(せんじん)の鉄鎖(てっさ)、江底(こうてい)に沈(しず)み 一片(いっぺん)の降旛(こうはん)石頭(せきとう)より出(い)づ 人世(じんせい) 幾回(いくかい)か往事(おうじ)を傷(いた)ましむるも 山形(さんけい) 旧(きゅう)に依(よ)りて 寒流(かんりゅう)に枕(のぞ)む 今(いま)より 四海(しかい) 家(いえ)と為(な)る日(ひ) 故塁(こるい) 蕭蕭(しょうしょう)たり 蘆荻(ろてき)の秋(あき) 王濬の楼船 益州より下り 金陵の王気黯然として収まる 千尋の鉄鎖、江底に沈み 一片の降旛石頭より出づ 人世 幾回か往事を傷ましむるも 山形 旧に依りて 寒流に枕む 今より 四海 家と為る日 故塁 蕭蕭たり 蘆荻の秋 王濬の軍船が蜀から攻め下れば 金陵の王気は黯淡として消え失せた 千尋の鉄鎖は江底に沈み 一片の降旗は石頭城を出た 人の世はいくたびか傷ましいことを繰り返したが 山の姿はもとのまま寒江の流れに臨んでいる 四海おさまって一家となった今日 塁のあとにはただ蕭蕭と 秋風が蘆荻をそよがしているばかり 王濬(おうしゅん)の楼船(ろうせん) 益(えき)州より下(くだ)り 金陵の王気(おうき) 黯然(あんぜん)として収まる 千尋(じん)の鉄鎖 江底(こうてい)に沈み 一片の降旛(こうはん) 石頭(せきとう)より出(い)づ 人世 幾回(いくかい)か往事を傷(いた)む 山形(さんけい) 旧に依(よ)りて寒流に枕(のぞ)む 今より四海家(いえ)と為(な)る日 故塁(こるい)蕭蕭(しょうしょう)たり 蘆荻(ろてき)の秋 王濬の楼船 益州より下り 金陵の王気 黯然として収まる 千尋の鉄鎖 江底に沈み 一片の降旛 石頭より出づ 人世 幾回か往事を傷む 山形 旧に依りて寒流に枕む 今より四海家と為る日 故塁蕭蕭たり 蘆荻の秋 むかし晋の王濬の軍船が成都から長江を下ると、 金陵にただよう帝王の気は色あせて消えた。 長さ千尋の鉄鎖が江底に沈められ、 降伏を告げる一枚の旗が石頭城から出てきた。 人の世でいくたびも繰り返された興亡盛衰に心傷むけれど、 西塞山の姿はかわりなく、寒江の流れに寄り添っている。 今日よりは四海が一家となった太平の御世、 年ふりた砦はさびしい秋風のなか蘆や荻が茂るばかり。 王濬(おうしゅん)の楼船(ろうせん) 益州(えきしゅう)より下(くだ)り 金陵(きんりょう)の王気(おうき) 黯然(あんぜん)として収(おさ)む 千尋(せんじん)の鉄鎖(てっさ) 江底(こうてい)に沈(しず)み 一片(いっぺん)の降旛(こうはん) 石頭(せきとう)より出(い)づ 人世(じんせい) 幾回(いくたび)か往事(おうじ)を傷(いた)む 山形(さんけい) 旧(きゅう)に依(よ)りて寒流(かんりゅう)に枕(まくら)す 今(いま)従(よ)り四海(しかい)家(いえ)と為(な)る日(ひ) 故塁(こるい)蕭蕭(しょうしょう)たり 蘆荻(ろてき)の秋(あき) 王濬の楼船 益州より下り 金陵の王気 黯然として収む 千尋の鉄鎖 江底に沈み 一片の降旛 石頭より出づ 人世 幾回か往事を傷む 山形 旧に依りて寒流に枕す 今従り四海家と為る日 故塁蕭蕭たり 蘆荻の秋 |