題名: | 登柳州城樓寄漳汀封連四州 |
作者: | 柳宗元 |
城上高樓接大荒,海天愁思正茫茫。驚風亂颭芙蓉水,密雨斜侵薜荔牆。嶺樹重遮千里目,江流曲似九廻腸。共來百越文身地,猶自音書滯一鄉。 | |
英譯: |
From the high city tower, a vast wilderness.
Expanse of sky, and sea— and infinite this sorrow.
As whirlwinds riot over lotus waters,
Sheets of rain 0 pound vine-covered walls.
Tiers of mountain trees block views of a thousand li
The river winds its course, like the convolutions of this heart.
Here we all are, where the native hordes tattoo their skin—
Without any letters, $totally apart.$ 000
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日譯: |
柳州(りゅうしゅう)の町(まち)の城壁上(じょうへきじょう)の高楼(こうろう)は、大地(だいち)の果(は)てまで連(つら)なっているかのようで、この極遠(きょくえん)の地(ち)の空(そら)の下(した)でのわたしの憂(うれ)いは、まことに、とりとめもなく広(ひろ)がるばかり。
激(へげ)しく荒々(あらあら)しい風(かぜ)が、蓮(れん)の花(はな)咲(さ)く池(いけ)の水(みず)をかき乱(みだ)し波立(なみだ)たせて、降(ふ)りしきる雨(あめ)は、風(かぜ)に吹(ふ)かれてつたかずらの垣(かき)に、斜(なえ)めに降(ふ)りかかる。峰々(みねみね)の木々(きぎ)は、重(かさ)なりあってわたしの千里(せんり)の眺望(ちょうぼう)を妨(さまた)げ、柳江(りゅうこう)の川(かわ)の流(なが)れは、柳州(りゅうしゅう)の町(まち)をめぐりめぐって、悲憤(ひふん)のあまり九回(きゅうかい)もねじれたわたしのはらわたに似(に)ている。
あなた方(かた)と一緒(いっしょ)に、この南蛮(なんばん)の刺青(いれずみ)する習俗(しゅうぞく)の地方(ちほう)にやって来(き)たが、今(いま)もなお、手紙(てがみ)は、それぞれが流(なが)されている一州(いっしゅう)のうちに、とどめおかれていて、届(とぢ)けられぬしまつなのだ。
柳州の町の城壁上の高楼は、大地の果てまで連なっているかのようで、この極遠の地の空の下でのわたしの憂いは、まことに、とりとめもなく広がるばかり。 激しく荒々しい風が、蓮の花咲く池の水をかき乱し波立たせて、降りしきる雨は、風に吹かれてつたかずらの垣に、斜めに降りかかる。峰々の木々は、重なりあってわたしの千里の眺望を妨げ、柳江の川の流れは、柳州の町をめぐりめぐって、悲憤のあまり九回もねじれたわたしのはらわたに似ている。 あなた方と一緒に、この南蛮の刺青する習俗の地方にやって来たが、今もなお、手紙は、それぞれが流されている一州のうちに、とどめおかれていて、届けられぬしまつなのだ。 城上(じょうじょう)の高楼(こうろう) 大荒(たいこう)に接(せっ)し 海天(かいてん)の愁思(しゅうし) 正(まさ)に茫茫(ぼうぼう) 驚風(きょうふう)乱(みだ)し颭(そよ)かず 芙蓉(ふよう)の水(みず) 密雨(みつう)斜(なな)めに侵(おか)す 薜荔(へいれい)の牆(かき) 嶺樹(れいじゅう)重(かさ)なりて 千里(せんり)の目(め)を遮(さえぎ)り 江流(こうりゅう)曲(めぐ)りて 九迴(きゅうかい)の腸(はらわた)に似(に)たり 共(とも)に来(きた)る 百粵文身(ひゃくえつぶんしん)の地(ち) 猶(な)お自(おのずか)ら 音書一鄉(いんしょいっきょう)に滯(とどこお)る 城上の高楼 大荒に接し 海天の愁思 正に茫茫 驚風乱し颭かず 芙蓉の水 密雨斜めに侵す 薜荔の牆 嶺樹重なりて 千里の目を遮り 江流曲りて 九迴の腸に似たり 共に来る 百粵文身の地 猶お自ら 音書一鄉に滯る 柳州城の高楼に立てば 眺めは遠く地の果てに連なる この天涯僻遠の地に流されて 憂き思いはいつとて晴れぬ 狂風吹き起こって蓮池の水を乱し 細雨斜めにしげく蔦の牆にふりそそぐ 嶺の樹々は重なって千里を望む目を障り 江の流れは曲がり曲がって九転の腸に似る ともにこの断髪文身の南越に来て居りながら 城上(じょうじょう)の高楼 大荒(たいこう)に接す 海天の愁思(しゅうし) 正(まさ)に茫茫(ぼうぼう) 驚風(きょうふう) 乱れ颭(ふ)く芙蓉(ふよう)の水 密雨(みつう) 斜(なな)めに侵(おか)す薜荔(へいれい)の牆(しょう) 嶺樹(れいじゅう) 重(かさ)なって千里の目を遮(さえぎ)り 江流(こうりゅう) 曲(めぐ)りて九迴(かい)の腸(はらわた)に似たり 共に来る百粵文身(えつ)の地 猶(なお)是(こ)れ音書(おんしょ)一鄉(きょう)に滯(とどこお)る 城上の高楼 大荒に接す 海天の愁思 正に茫茫 驚風 乱れ颭く芙蓉の水 密雨 斜めに侵す薜荔の牆 嶺樹 重なって千里の目を遮り 江流 曲りて九迴の腸に似たり 共に来る百粵文身の地 猶是れ音書一鄉に滯る 柳州の城の高楼に登れば、世界の果てに連なっているかのようだ。荒遠の地の空の下、私の愁いは限りなく広がる。 折しも吹き起った激しい風は、蓮の花咲く池水を波立たせ、降りしきる細雨は、$風にあおられて$斜めに期のからまる城壁に降りこめる。 嶺々の樹木は重なりあって、千里の彼方を望まんとする私の目を 遮り、柳江の流れは曲りくねって、愁いのため一日に九転する腸にも似ている。 我らともに$都を追われて$断髪文身を習俗とするこの南蛮の地にやってきたが、手紙を出そうにも各々の任地に停滞して、互いに通じあうことすらできないのだ。 城上(じゃうじゃう)の高楼(かうろう) 大荒(たいくわう)に接(せっ)す 海天(かいてん)の愁思(しうし) 正(まさ)に茫茫(ばうばう) 驚風(きゃうふう) 乱(みだ)れ颭(うご)かす 芙蓉(ふよう)の水(みづ) 密雨(みつう) 斜(なな)めに侵(をか)す 薛荔(へいれい)の牆(かき) 嶺樹(れいじゅ)重(かさ)なって 千里(せんり)の目(め)を遮(さへぎ)り 江流(かうりう)曲(まが)って 九迴(きうくわい)の腸(ちゃう)に似(に)たり 共(とも)に来(き)たる 百越(ひゃくえつ)文身(ぶんしん)の地(ち) 猶自(なほ) 音書(いんしょ) 一郷(いっきゃう)に滞(とどこほ)る 城上の高楼 大荒に接す 海天の愁思 正に茫茫 驚風 乱れ颭かす 芙蓉の水 密雨 斜めに侵す 薛荔の牆 嶺樹重なって 千里の目を遮り 江流曲って 九迴の腸に似たり 共に来たる 百越文身の地 猶自 音書 一郷に滞る 柳州城の高楼に登れば、広大な原野が目に入る。 海と空のように、わが憂いはまさに果てしなく広がる。 はげしい風が、はすの花咲く池の水を波立たせ、 降りしきる雨が、つる草のからむかきねに斜にあたる。 群山の峰に幾重にも連なる木々は、遠くを見ようとする私の目をさえぎり、 柳江の流れは、曲がりくねって何度もねじれたはらわたのようである。 我々はともに、この南方のいれずみの風習をもつ未開の地にやって来た。 ここでは、今もなお音信さえ通ぜず、一地域に滞っている。 城上(じょうじょう)の高楼(こうろう) 大荒(たいこう)に接(せっ)し 海天(かいてん)の愁思(しゅうし) 正(まさ)に茫茫(ぼうぼう)たり 驚風(きょうふう) 乱(みだ)れて颭(うご)かす 芙蓉(ふよう)の水(みず) 密雨(みつう) 斜(なな)めに侵(おか)す 薛荔(へいれい)の牆(かき) 嶺樹(れいじゅ) 重(かさ)なって千里(せんり)の目(め)を遮(さえぎ)り 江流(こうりゅう) 曲(ま)がって九回(きゅうかい)の腸(はらわた)に似(に)たり 共(とも)に百越(ひゃくえつ)文身(ぶんしん)の地(ち)に来(き)たる 猶(な)お自(おのず)から音書(いんしょ) 一郷(いっきょう)に滞(とどこお)る 城上の高楼 大荒に接し 海天の愁思 正に茫茫たり 驚風 乱れて颭かす 芙蓉の水 密雨 斜めに侵す 薛荔の牆 嶺樹 重なって千里の目を遮り 江流 曲がって九回の腸に似たり 共に百越文身の地に来たる 猶お自から音書 一郷に滞る |