題名: | 長安春望 |
作者: | 盧綸 |
東風吹雨過青山,却望千門草色閑。家在夢中何日到,春生江上幾人還。川原繚繞浮雲外,宮闕參差落照間。誰念爲儒逢世難,獨將衰鬢客秦關。 | |
英譯: |
The cast wind blows over the green rain mountains.
I see a thousand green houses in my dreams.
When shall I arrive at my homestead?
Spring falls on the river. How many ever return?
Over rivers and plains float the curling clouds:
Palaces and castles stand in the setting sun.
Who remembers the scholar in a world at war?
Grey-haired, I stand alone at the Pass of Ch’in.
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日譯: |
東風が雨を吹いて青い山をかすめて過ぎてゆく。ふりかえって宮城の門の方角をみれば、茂った草の色ものどかに若綠をはびこらせている。
故郷の家は、よく夢にみるだけで、いつになったら歸ることができるだろうか。春は、あの水の江のほとりにかえってくるが、家に歸ってゆけるものは幾人あるだろうか。川ぞいの原っばは、うねくねとめぐりめぐって、地平線の浮き雲のかなたにまでつづいている。かなたにたちならぶ宮殿の甍には、あるいは高く、あるいは低く、 のさけ目からさしてきた落日の光のなかに輝いている。ああ、儒者として、この亂れた世にめぐりあわせ、髪の毛も薄くなった老いの身をたったひとり、この關中の旅寓になすこともなく滞在しようなどとは、いったい誰が思ったことだろう。
東風(とうふ) 雨(あめ)を吹(ふ)いて 青山(せいざん)を過(す)ぐ。 卻(かへ)って千門(せんもん)を望(のぞ)めば 草色(さうしょく)閒(かん)なり。 家(いへ)は夢中(むちゅう)に在(あ)って何(いづ)れの日(ひ)か到(いた)らん。 春(はる)は江上(かうじゃう)に来(きた)りて幾人(いくにん)か還(かへ)る。 川原(せんげん)繚繞(れうぜう)す 浮雲(ふうん)の外(ほか) 宮闕(きゅうけつ)參差(しんし)たり 落照(らくせう)の間(あひだ) 誰(たれ)か念(おも)はん 儒(じゅ)と為(な)りて世難(せいなん)に逢(あ)ひ、 獨(ひと)り衰鬢(すいびん)を將(も)って秦關(しんくわん)に客(かく)たらんとは。 東風 雨を吹いて 青山を過ぐ。 卻って千門を望めば 草色閒なり。 家は夢中に在って何れの日か到らん。 春は江上に来りて幾人か還る。 川原繚繞す 浮雲の外 宮闕參差たり 落照の間 誰か念はん 儒と為りて世難に逢ひ、 獨り衰鬢を將って秦關に客たらんとは。 |