題名: | 省試湘靈鼓瑟 |
作者: | 錢起 |
善鼓雲和瑟,常聞帝子靈。馮夷空自舞,楚客不堪聽。苦調淒金石,清音入杳冥。蒼梧來怨慕,白芷動芳馨。流水傳瀟浦,悲風過洞庭。曲終人不見,江上數峰青。 | |
英譯: | 暫無英譯內容 |
日譯: |
しばしば耳にしたことがある―湘水の神霊と化した堯帝の娘たち、蛾皇と女英は、$月夜$巧みに雲和の瑟をかなでて$愛する夫[舜帝]を失ったさびしさをまぎらわせる$のだ、と。その美しい調べに誘われて、水の神馮夷は、彼女たちの心の痛みに気づかぬまま、水上で踊りはじめ、楚の逐臣屈原は、悲しい胸の内を察して、聴くに忍びず、$その思いを詩のなかに詠みこんだ$。悲痛な調べは、鐘や磐よりも悽絶にひびきわたり、清怨な響きは、飛揚して暗い大空のかなたへ、そして深い水底へと消えてゆく。
遥かな蒼梧の山に眠る舜帝の魂も、$かつての妻たちがかなでる$哀切なひびきに接して、思慕の情を切なく呼びさまされ、水辺の香草白芷も、$身をふるわせて感動し$、芳しい馨りをただよわせる。流れる水のような調べは、清らかな湘水の流れにのって流域一帯に伝わり、悲しい風を思わせる調べは、吹きよせる烈しい風にのって洞庭湖の水面を渡ってゆく。いつしか曲がとだえて静まりかえった今、瑟をかなでていた人の姿は、どこにも見えず、ただ滔々と流れゆく湘水の岸辺に、いくつかの峰々が$夜の闇のなかに$青黒くそそりたつばかり。
善(よ)く雲和(うんわ)の瑟(しつ)を鼓(こ)するは 常(つね)に聞(き)く 帝子(ていし)の霊(れい)なり、と 馮夷(ひょうい)は 空(むな)しく自(みずか)ら舞(ま )い 楚客(そかく)は 聴(き)くに堪(た)えず 苦調(くちょう) 金石(きんせき)よりも凄(すさま)じく 清音(せいおん) 杳冥(ようめい)に入(い)る 蒼梧(そうご)は 怨慕(えんぼ)を来(いた)し 白芷(はくし)は 芳馨(ほうけい)を動(うご)かす 流水(りゅうすい) 湘浦(しょうほ)に伝(つた)わり 悲風(ひふう) 洞庭(どうてい)を過(す)ぐ 曲(きょく)終(おわ)りて 人(ひと)見(み)えず 江上(こうじょう) 数峰(すうほう)青(あお)し 善く雲和の瑟を鼓するは 常に聞く 帝子の霊なり、と 馮夷は 空しく自ら舞い 楚客は 聴くに堪えず 苦調 金石よりも凄じく 清音 杳冥に入る 蒼梧は 怨慕を来し 白芷は 芳馨を動かす 流水 湘浦に伝わり 悲風 洞庭を過ぐ 曲終りて 人見えず 江上 数峰青し |