題名: | 返照 |
作者: | 杜甫 |
楚王宮北正黃昏,白帝城西過雨痕。返照入江翻石壁,歸雲擁樹失山村。衰年肺病唯高枕,絕塞愁時早閉門。不可久留豺虎亂,南方實有未招魂。 | |
英譯: | 暫無英譯內容 |
日譯: |
楚王宮のあったと覚しきところの北がわは、ちょうどたそがれ。白帝城の西の方通り雨のあとが残っている。入日のてりかえしが長江の深く暗い谷のような峽間にさしこむと、水面から岩石に反射して絶璧がパッと明るく浮かびだしてくる。山に歸ってゆく雲が木々をだきかかえ、村里の部落が見えなくなった。
わたしは老いの身に、肺までわずらって、することもなく寝ているばかり。このさいはてのとりでの町では、世相のけわしさを心配して早くから門をしめてしまう。
虎や山大のような連中が騒亂をおこしているこんな土地に、長くおられるものではない。
楚辭のことばではないが、この南方の土地には、まだ故郷に呼びかえされぬ迷える魂がさまようているのだ$生きているこのわたしの亡靈が)$。
楚王(そわう)宮北(きゅうほく) 正(まさ)に黃昏(くわうこん)。 白帝城(はくてい)西(せう) 過雨(くわう)の痕(こん)。 返照(へんせう) 江(かう)に入(い)って 石壁(せきへき)を翻(ひるがえ)し、 歸雲(きうん) 樹(き)を擁(よう)して 山村(さんそん)を失(うしな)ふ。 衰年(すいねん) 肺(はい)を病(や)んで 惟(ただ) 枕(まくら)を高(たか)うし、 絕塞(ぜつさい) 時(とき)を愁(うれ)へて 早(はや)く門(もん)を閉(と)つ。 久(ひさ)しく豺虎(さいこ)の亂(らん)に留(とど)まる可(べ)からず。 南方實(なんぽうじつ)に未(いま)だ招(まね)かれざるの魂(こん)有(あ)り。 楚王宮北 正に黃昏。 白帝城西 過雨の痕。 返照 江に入って 石壁を翻し、 歸雲 樹を擁して 山村を失ふ。 衰年 肺を病んで 惟 枕を高うし、 絕塞 時を愁へて 早く門を閉つ。 久しく豺虎の亂に留まる可からず。 南方實に未だ招かれざるの魂有り。 |