題名: | 送李少府貶峽中王少府貶長沙 |
作者: | 高適 |
嗟君此別意何如,駐馬銜桮問謫居。巫峽啼猿數行淚,衡陽歸雁幾封書。青楓江上秋天遠,白帝城邊古木疎。聖代即今多雨露,暫時分手莫躊躇。 | |
英譯: |
ALAS! My friends, how do you feel about the parting?
Stay your horses; empty one cup of wine and let me ask you about the places whither you are going.
In Wu Hsia the howling of the monkeys will make the tears fall
From Hêng-yang how many letters will the wild geese bring as they fly home?
O’er the Green Maple River in autumn (there is one) disappearing sail.
By the side of the “White Emperor City” ancient trees are thinly scattered,
But the imperial favour in this hallowed age still sheds on us its refreshing dew,
Temporarily you may have to say good bye, but don't hang back.
What are you thinking as we part from one another, Pulling in our horses for the stirrup-cups? Do these tear-streaks mean Wu Valley monkeys all weeping, Or wildgeese returning with news from Hêng Mountain?... On the river between green maples an autumn sail grows dim, There are only a few old trees by the wall of the White God City... But the year is bound to freshen us with a dew of heavenly favour— Take heart, we shall soon be together again! ALAS! My friends, how do you feel about the parting? Stay your horses; empty one cup of wine and let me ask you about the places whither you are going. In Wu Hsia the howling of the monkeys will make the tears fall From Hêng Yang how many letters will the wild geese bring as they fly home? O’er the Green Maple River in autumn (there is one) disappearing sail. By the side of the “White Emperor City” ancient trees are thinly scattered, But the imperial favour in this hallowed age still sheds on us its refreshing dew, Temporarily you may have to say good bye, but don't hang back. My friend, what is it that you think At this sad moment when we part? Stay your hoses and take a drink Before to your places of exile you start. At Witch Gorge the monkeys' cry Will draw forth your mournful tears; From the South Peak the migrant geese will fly To carry your news to grateful ears. Autumn sails fade out of sight On the Green Maple River up or down; The old trees grow sparse and slight By the wall of the White Emperor Town. Generous with favours His Majesty is inclined to be. We will part, but do not waver – You'll not long be gone, as I can see. Ah, dear sirs, how do we feel, saying goodbye like this? We rein in our horses and drink our ale, and I ask about your postings – The Wu gorge, where the apes will howl till your face is lined with tears; Hengyang, where homing geese will carry missives with them. Your autumn sails will take you far on the green maple river; The ancient trees will be thinly spread by the walls of Baidi city. Today the dynasty in its wisdom often bestows its grace, $(And)$ though we will be apart for a while you should not be distressed. |
日譯: |
ああ君(きみ)たちよ、この別離(べつり)に、心中(しんちゅう)はどんなものであろうか。二人(ふたり)の馬(うま)を引(ひ)きとめ、別(わか)れの酒杯(しゅはい)を交(か)わして、君(きみ)たちが行(い)く左遷(させん)の地(ち)のようすをたずねよう。
李少府(りしょうふ)の行(い)く巫峡(ふきょう)のあたりでは、鳴(な)く猿(さる)の声(こえ)が、しきりに聞(き)こえて、幾筋(いくすじ)かの涙(なみだ)が流(なが)れようし、王少府(おうしょうふ)の行(い)く衡陽(こうよう)のあたりでは、そこから北(きた)へ引(ひ)き返(かえ)すという雁(がん)に、何通(なんとお)かの故郷(こきょう)への便(たよ)りを託(たく)することもできようか。王少府(おうしょうふ)の行(い)く青楓江(せいふうこう)には、秋(あき)の川(かわ)を行(い)く船(ふね)の帆(ほう)が遠(とお)く見(み)えて、李少府(りしょうふ)の行(い)く白帝城(はくていじょう)のあたりには、古木(こぼく)の姿(すがた)がまばらに見(み)えるころであろう。
君(きみ)たちは、このような遠地(えんち)に左遷(させん)される身(み)ではあるが、聖天子(せいてんし)の治(おさ)めたまう御代(ごだい)である現在(げんざい)、豊(ゆた)かな恵(めぐ)みも多(おお)いにちがいない。しばらくの別離(べつり)、ためらうことなく旅立(たびだつ)ちたまえ。
ああ君たちよ、この別離に、心中はどんなものであろうか。二人の馬を引きとめ、別れの酒杯を交わして、君たちが行く左遷の地のようすをたずねよう。 李少府の行く巫峡のあたりでは、鳴く猿の声が、しきりに聞こえて、幾筋かの涙が流れようし、王少府の行く衡陽のあたりでは、そこから北へ引き返すという雁に、何通かの故郷への便りを託することもできようか。王少府の行く青楓江には、秋の川を行く船の帆が遠く見えて、李少府の行く白帝城のあたりには、古木の姿がまばらに見えるころであろう。 君たちは、このような遠地に左遷される身ではあるが、聖天子の治めたまう御代である現在、豊かな恵みも多いにちがいない。しばらくの別離、ためらうことなく旅立ちたまえ。 嗟(ああ) 君(きみ) 此(こ)の別(わか)れ 意如何(いかかん) 馬(うま)を駐(とど)め 杯(さかずき)を銜(ふく)みて 謫居(たくきょ)を問(と)う 巫峡(ふきょう)の啼猿(ていえん) 数行(すうこう)の淚(なみだ) 衡陽(こうよう)の帰雁(きがん) 幾封(いくふう)の書(しょ) 青楓江上(せいふうこうじょう) 秋帆(しゅうはん)遠(とお)く 白帝城辺(はくていじょうへん) 古木(こぼく)疎(まばら)ならん 聖代(せいだい)即今(そくこん) 雨露(うろ)多(おお)し 暫時(ざんじ)の分手(ぶんしゅ) 躊躇(ちゅうちょ)すること莫(な)かれ 嗟 君 此の別れ 意如何 馬を駐め 杯を銜みて 謫居を問う 巫峡の啼猿 数行の淚 衡陽の帰雁 幾封の書 青楓江上 秋帆遠く 白帝城辺 古木疎ならん 聖代即今 雨露多し 暫時の分手 躊躇すること莫かれ ああこのたびの別れ 君たちの思いはいかに しばらく馬をとどめ杯をあげて 君たち謫居のさまをたずねたい 李君のゆく巫峽のあたり 猿の鳴き声が多いという その声はどんなに涙をさそうことか 王君のゆく衡陽の地は 雁もそこから北に回るという その雁にたよりを寄せるすべもあろうか 青楓江に秋ゆく舟の影も遠く 白帝城に古りたる樹々の姿もまばら さあれ今聖代に みめぐみも多いことゆえ しばし別れるとも 君よ ためらいたもう勿れ 嗟(ああ) 君が此(こ)の別れ意如何(いかかん) 馬を駐(とど)め杯(さかずき)を銜(ふく)んで謫居(たくきょ)を問う 巫峡(ふきょう)の啼猿(ていえん) 数行(すうこう)の淚(なみだ) 衡陽(こうよう)の帰雁(きがん) 幾封(いくふう)の書 青楓江上(せいふうこうじょう) 秋帆(しゅうはん)遠く 白帝城辺(はくていじょうへん) 古木(こぼく)疎(そ)なり 聖代(せいだい) 即今(そくこん) 雨露(うろ)多し 暫時(ざんじ)手を分(わ)かつも躊躇(ちゅうちょ)する莫(なか)れ 嗟 君が此の別れ意如何 馬を駐め杯を銜んで謫居を問う 巫峡の啼猿 数行の淚 衡陽の帰雁 幾封の書 青楓江上 秋帆遠く 白帝城辺 古木疎なり 聖代 即今 雨露多し 暫時手を分かつも躊躇する莫れ ああ、君たちは、この別れの気持ちはどうなんですか。ここに馬をとどめて酒杯をふくんで、しばしの餞別のしるしとしたい。おふたかたの落ちゆくさきの配所はいったいどこなんだ。ああと李君はいったー巫峽のほとりだよ、猿の悲しい鳴きごえに、いくすじの涙がこぼれおちることやら。王君はいったーぼくのは衡陽のはてだよ、ひ きかえして飛びかえる雁が何通かの手紙をもってきてくれることだろうか。その長沙の近くを流れる青楓江のほとりにたてば、秋空がどこまでも遠くつづいるいるだろうよ。李君はいったーそうだ、そうだ、巫峽にのぞむ白帝城のあたり古木が間違にあちこちにばらばらと竝んでいて、なんと淋しいことだろうよ。 しかし、今や聖明の君のしろしめすおめぐみの雨露のしげい御世のことだから、そのうち吉左右も聞かれることだろう。しばしのわかれだ。あまりくよくよと、ためらうことはない。思い切ってさばさばした氣持ちで行って來たまえ。 嗟(ああ) 君(きみ) 此(こ)の別(わか)て 意何如(いいかん)。 馬(うま)を駐(とど)め杯(さかづき)を銜(ふく)んで謫居(たくきょ)を問(と)ふ。 巫峽(ふけふ)の啼猿(ていえん) 數行(すうかう)淚 (なんだ)。 衡陽(かうやう)の歸雁(きがん) 幾封(いくふう)の書(しょ)。 青楓(せいふう)江上(かうじゃう) 青天(せいてん)遠(とほ)く、 白帝城(はくていじゃう)邊(へん) 古木(こぼく)疎(まばら)なり。 聖代(せいだい)即今(そくこん) 雨露(うろ)多(おほ)し。 暫時(ざんじ) 手(て)を分(わか)つ 躊躇(ちうちょ)する莫(な)かれ。 嗟 君 此の別て 意何如。 馬を駐め杯を銜んで謫居を問ふ。 巫峽の啼猿 數行淚。 衡陽の歸雁 幾封の書。 青楓江上 青天遠く、 白帝城邊 古木疎なり。 聖代即今 雨露多し。 暫時 手を分つ 躊躇する莫かれ。 ああ、君たちよ、この別れにのぞんで心のうちはいかばかりか。 馬をとどめさせ、別れの杯を口にあのことをたずねる。 李君の行く巫峡のあたりは、哀しい猿の啼き声に、いくすじの涙が落ち散ることか。 王君の行く長沙では、衡陽まで来て北へ帰る雁が、何通の手 紙をはこぶことか。 長沙の近くの青楓のほとりでは、秋の空がどこまでも遠く続き、 三峡に近い白帝城のあたりでは、古びた木がまばらに立っていよう。 聖天子が治められる今の代は、恩沢が豊かにほどこされ、 ほんのしばらくのお別れだから、ためらわずに行きたまえ。 嗟(ああ) 君(きみ)が此(こ)の別(わか)れ 意(い) 何如(いかん)ぞや 馬(うま)を駐(とど)め杯(さかずき)を銜(ふく)みて謫居(たくきょ)を問(と)う 巫峽(ふきょう)の啼猿(ていえん) 數行(すうこう)淚 (なむだ) 衡陽(こうよう)の歸雁(きがん) 幾封(いくふう)の書(しょ) 青楓(せいふう)江上(こうじじょう) 秋天(しゅうてん)遠(とお)く 白帝城(はくていじょう)辺(へん)古木(こぼく)疎(そ)なり 聖代(せいだい)即今(そくこん)雨露(うろ)多(おお)し 暫時(ざんじ)手(て)を分(わか)つ 躊躇(ちゅうちょ)する莫(な)かれ 嗟 君が此の別れ 意 何如ぞや 馬を駐め杯を銜みて謫居を問う 巫峽の啼猿 數行淚 衡陽の歸雁 幾封の書 青楓江上 秋天遠く 白帝城辺古木疎なり 聖代即今雨露多し 暫時手を分つ 躊躇する莫かれ ああ、君たちよ、この別れにのぞんで心のうちはいかばかりか。 馬をとどめさせ、別れの杯を口にあのことをたずねる。 李君の行く巫峡のあたりは、哀しい猿の啼き声に、いくすじの涙が落ち散ることか。 王君の行く長沙では、衡陽まで来て北へ帰る雁が、何通の手 紙をはこぶことか。 長沙の近くの青楓のほとりでは、秋の空がどこまでも遠く続き、 三峡に近い白帝城のあたりでは、古びた木がまばらに立っていよう。 聖天子が治められる今の代は、恩沢が豊かにほどこされ、 ほんのしばらくのお別れだから、ためらわずに行きたまえ。 嗟(ああ) 君(きみ)が此(こ)の別(わか)て 意(い) 何如(いいかん)ぞや 馬(うま)を駐(とど)め杯(さかずき)を銜(ふく)んで謫居(たくきょ)を問(と)う 巫峽(ふきょう)の啼猿(ていえん) 數行(すうこう)の淚 (なみだ) 衡陽(こうよう)の歸雁(きがん) 幾封(いくふう)の書(しょ) 青楓(せいふう)江上(こうじゃょ) 秋天(しゅうてん)遠(とお)く 白帝城(はくていじょう)辺(へん) 古木(こぼく)疎(そ)なり 聖代(せいだい)即今(そくこん)雨露(うろ)多(おお)し 暫時(ざんじ)手(て)を分(わか)つ 躊躇(ちゅうちょ)する莫(な)かれ 嗟 君が此の別て 意 何如ぞや 馬を駐め杯を銜んで謫居を問う 巫峽の啼猿 數行の淚 衡陽の歸雁 幾封の書 青楓江上 秋天遠く 白帝城辺 古木疎なり 聖代即今雨露多し 暫時手を分つ 躊躇する莫かれ |